「どうしたんだよ。何かあったのかい?早く言ってっくれよ」
「実は、昨日少し用事があって町にでかけたんだよ。君の息子が果物だべたいというのでね。そして果物を買って家に戻ってきたんだが、どうしたことか、君の息子は家のどこにもいなく、この二匹の猿がいたんだ。そこで俺は猿にかまわず、家の周りやいつも登る山に探しに行ったんだが、どうしてもみつからない」
「息子たちはいったいどこに行ったんだ?」
「まあ、聞いてくれ。俺は、自分が外で君の息子を探している間に、もしかしらたら息子たちが戻っているのではないかと思って、家に入る前から大声でドーワ!ドーチョン!と、君の息子の名前を叫んでみたんだ。するとどうしたことか、この二匹の猿が駆け寄ってきてね。おかしいなと思って、ドーワ!ともう一度呼ぶとこちらの大きい猿がキーッ!キーッ!と答える。そこで、ドーチョン!と呼んでみると、もう一匹の小さな猿が、同じようにキーッ!キーッ!と答えるんだ。これはおかしいと思ってそれから何度もやってみたが同じこと」
「そりゃあ、ほんとうか?」
「ああ。信じないなら、君が息子の名前を呼んでみな」
「ええ?そんな・・」とゾーダンは半信半疑で猿たちを見つめたあと、「ドーワ!」と呼んでみた。すると大きい方の猿が「キーッ!キーッ!」と鳴いてゾーダンの側にきて踊りだした。
「これは・・?」とゾーダンは急にめまいがしたが、それでも何かの間違いだと思い、今度は小さな猿に「ドーチョン」と呼んでみた。すると小さな猿も「キーッ!キーッ!」と叫び、同じようにゾーダンの側にやってきた。ゾーダンはあまりのことに、地面に座り込んでしまった。
これを見たローゾ、「君の息子たちはいたずらだが、よくとんぼ返りなど難しいことをして人を驚かせたことがあるよね」
これにはゾーダン、ただ首を縦に振るだけ。
「じゃあ。この二匹の猿にそれが出来るかどうか、やらせてみよう」
ロージはこういってから猿にむかい「ドーワとドーチョン!得意のとんぼ返りを父さんにみせてみな!」といって手まねすると、二匹の猿はその場でとんぼ返りなどを始めた。
これにゾーダンは、気を失いそうになった。
「おい!おい!ゾーダン、大丈夫か!しっかりしろ!」
このロージの声にゾーダンはやっと我に帰り、涙を流し始めた。
「な、なんということだ!どうして俺の息子が三日たってから猿にかわったんだ!?天よ!こんなことってあるのか!」
そこでロージは待ってましたと、不意にニヤニヤしてこう言った。
「だろう?君はこれを信じるかい?」
「え?ロージ!いったいどういうことだ?」
「おなじことさ!だって君が木の箱に入れておいた金が三日たって腐った棒切れに変わったなんて、誰が信じる?」
これにゾーダンははっとなった。そしてしばらくニヤニヤしているロージの顔を見つめていたが、急に顔を赤くしてやっと口をあけた。
「君は、君は知っていたのか?俺が金を独り占めにしたいばかりに・・隠したことを・・」
「だって、金が腐った棒切れに変ったっていってもおかしいだろう?」
「そうだったのか!俺は、俺は、幼友達でこれまで助け合ってきた君になんと言うことを・・・すまない。すまない。ロージ。この俺を許してくれ・・。
あの金はまだ使わず家においてある。さあ。いまから俺の家へ行って仲良くわけよう。ロージ。欲張りになったこのゾーダンを許してくれるか?」
「ははは!わかってくれたか、ゾーダン。元の君に戻ってくれたんだね。俺は君を許すよ。安心しな」
「ありがとう!ロージ。で、俺の息子は?」
「ああ。心配ないよ。谷間にある俺の親戚のうちに預かってもらってあるから」
「そいか。すまない」
ということになり、二人はそれから谷間の家へ行ってゾーダンの二人の息子を連れ、その足でゾーダンに家に向った。
このことがあってから、ロージとゾーダンの二人は、以前よりも仲良しになったという。はいはい。よかったわい!
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