今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今日のこの時間は昔の本《せき言》から「幼友達」というお話をご紹介しましょう。
「幼友達」(胡証)
時は唐の時代。ある胡証というある若者はおとなしかったが、美男子なので女子から好かれ、これを妬んだ町のごろつきたちが、なにかと因縁をつけて嫌がらせをしたり、痛めつけたりする。胡証は、一応はごろつきたちに歯向かうのだが、なにしろ奴らは誰に習ったのか、いずれもかなりのやり手なので、いつもやられるばっかり。こうして胡証は、しょっゅう体のあちこちにあざができたり、傷跡が残ったりした。しかし、この町には、これらごろつきを恐れ誰一人味方してくれるものはいなかった。それでも胡証は我慢して町を離れなかった。というのは、町には自分を受け入れてくれるやさしい塾の先生がいて、自分には金がないのを知っていながらよく面倒を見てくれ、それにこの先生から多くのことを学べるからだ。
と、次の年、裴度という胡証の幼友達が町にやってきた。実は町で裴度とばったり会ったのである。
「あれ?君は裴度じゃないのか?」
「なんだ。胡証じゃないか?この町にいたのか?」
「ひさしぶりだなあ」
「そうだな。再会を祝ってどこかでいっぱいやろう」
「そうだな」
ということになり、二人は近くの飯屋に入って隅の席で向かい合った。そして裴度が酒肴を注文し、今日は自分が奢るから遠慮するなという。こうして料理がきたが、裴度はこのときになって胡証の額や腕にあざがあることに気付いた。
「うん?どうしたんだい?いつも喧嘩しているのか?おとなしかった君とは思えないが」
「いや、なんでもない」
「なんだよ!俺とは幼友達じゃないか。水臭いことは言わんと話してくれ」
これに胡証は暫く黙っていたが、相手の顔を見てから話し出した。それもそのはず、裴度は小さいときから普通の子供より体が大きく、その上、自分と同じ師匠について武術を習い、自分は上達しなかったが、裴度はかなり上達した。そして裴度は、当時胡証が悪ガキにいじめられるごとに助けていたのだ。
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