で、それまで外で待っていた胡証は、裴度が飛んで出てきたので、いったいどうしたのかと心配そうな顔をしたが、それを察してか、裴度は胡証をみてにやっと笑った。これに胡証は安心。あとは見物するだけ。もちろん、外では「喧嘩だ!喧嘩だ!」と人が集まり、遠くから見ている。そのうちに、これら見物人たちは今日の喧嘩は一人対数人だということがわかり、その上、人数が多い方はこの町では悪名高きごろつきだと知り、また悪さ始めやがったとため息。もちろん、ごろつきたちの腕を知っている人たちは、一人で数人のごろつきと渡り合う裴度を気の毒がった。
「あの強いごろつきどもが相手じゃ、あの若いのは危ないな。また大怪我するぞ」
「ほんとうだ!半殺しにされるよ」
「でもよ!ごろつきども、今日は一人少ないぜ。あの大男がいないぜ」
「何はともあれ。あの若いのがやられるのを見たくわねえな」と、見物人たちは勝手に話している。
さて、こちら裴度だが、かの大男はやっつけたが、胡証がいうとおり、これらごろつきは誰かについて武術を習っていたことが、それぞれの構えでわかった。そこで油断は大敵とかなり気を引き締め、自分を囲んだ奴らにどこから攻められても反撃できるように構えた。一方、ごろつきどもも、この若者がこれまで接した相手より手ごわいとわかったので、それぞれ己の得意技を使おうとした。そして双方はにらみあったまま、すぐには動かなかった。しばらくしてごろつきの一人が大刀を振りかざし、「キェー」という声を放ち、裴度の左から襲い掛かったが、裴度はその動きをいち早く悟り、仰向けに倒れててそれをしのぎ、右足でそいつの下腹を思い切り蹴り上げので、その男は「グウ・・」とうなって前に走りじゃがみ込んでから下腹に両手を当ててのた打ち回った。
これを見て見物人が驚きの声を上げる。
また、ほかのごろつきはいくらかおびえだしたが、頭らしい男が、ものすごい顔をして前に走り飛び上がり、両手に握っていた太い鉄の棒を裴度の頭めがけて思い切り振りおろした。しかし、裴度が右にしゃがんでそれを凌ぎ、くるっと向きを換えて飛び上がり、地面に下りたばかりの男が振りたので、右のこぶしを男の顔面に強く入れた。
|