「実は・・・・」と胡証はゆっくりと話し出した。これを聞き終わった裴度は、怒った顔をして徳利をつかみ、らっぱ飲みして空にし、「おう!酒のおかわりだ」と店の小僧に頼むと胡証に言い出した。
「そうだったのか。君は武術の心得が少しあっても、むかしからおとなしいから今でもいじめられているのか。よし、俺がなんとかしよう」
「でも、相手は一人じゃなく、それにかなり出来るよ」
「ふーん。あってみなきゃわからんぞ」
「大丈夫かえ?」
「ああ。で、そのかわり、俺もその塾に通っていくらか知識をつけたいから、その先生にいってくれよ」
「それはいい。一緒に塾に通えるね」
「うん。俺も学問を身に付けないといかんからね」
「じゃあ、ごろつきどもは何とかしてくれよ」
「ああ。で、こうしよう」
ということになり、二人は飲み食いしながら何かを話し始めた。
さて、次の日、町では胡証が前を歩き、その少し後ろから裴度が付いていった。しかし、かのごろつきどもにはなかなか会えない。そこで胡証がその辺の何軒かの飯屋に入って探すと、ある大きな店で、かのごろつきたちが酒を飲んでいた。
「おい!この店の中にいるぞ」
「そうか。よし、あとは俺に任しておきな。外で待ってていてくれ」
こういうと裴度は一人で店に入り、かのごろつきたちが飲み食いしている卓にいく。
これにごろつきの一人が気が付き、一人の見知らぬ若者が近くで自分たちを見ているので「何だおめえは!!?」ときく。この声にほかのごろつきも裴度を見た。
「なんだ、なんだ!?俺たちに何か用か?」
そこで裴度が答えた。
「いやあ。兄さん方、やってますね。実は俺の幼友達が、兄さん方にこれまでかなりお世話になったというので、俺が代わって兄さん方にお礼をしようと思ってね」
「なに?お礼を?俺たちの世話になったというのは誰だ?」
「そりゃあ。あとでわかりますよ」
こういった裴度は、店の小僧にどんどん酒を持ってくるように声をかけた。
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