今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
この時間は、清の時代の昔話を二つ後紹介しましょう。
はじめは「殷さんと鸚鵡(オウム)」です。
「殷さんと鸚鵡」
むかし、殷さんは家で鸚鵡を飼っていた。殷さんはこの鸚鵡がとてもかわいく、丁度子供がいなかったので、自分の息子のように扱い、細かく世話し、人間の言葉を教えた。そして鸚鵡のほうも主の気持ちがわかるのか、もの覚えも早く、殷さんをよろこばせた。その後、殷さんは外に出かけるごとに、鸚鵡を鳥かごに入れてもち、鸚鵡と話しながらあちこちをぶらぶらし、それは楽しそうで、鸚鵡の方も殷さんに一生懸命こたえるようだった。
それから数年たったある日、殷さんはいつものように鸚鵡を鳥かごに入れ旅をした。で、丁度、絳(こう)州という古里からかなりはなれたところまで来て、金が少ししか残っていないことに気付いた。道中は鸚鵡と楽しく話し、旅費などはまだ十分あると思い込んでいたのだろうか?
「これはいかん!うっかりしていた。これでは今夜の宿代もたりないわい。それに飯も食えんぞ!どうしよう」と殷さんは困りだし、いらいらした。
すると、鸚鵡が急にしゃべりだした。
「ご主人さま」
「な、な、なんだ。急にしゃべりだして、びっくりしたあ」
「お金が足りなくなったんで困っているんでしょうか?」
「そ、そうだが。お前にどうしてそれがわかる?」
「ご主人と長い間一緒にいればそれはわかりますよ」
「そ、そうか?」
「どうでしょう?わたしに考えがありますが」
「お前に考えが?」
「はい」
「では、いってみろ」
「こうなされませ。この私を売ってお金にかえるのですよ」
「なんだよ。わしがこんなにかわいがっているお前を売るだと?」
「はい、私を金持ちか、または大きな役人に売れば大金が手に入りますよ。そうすれば、お金に困ることなどないでしょう」
「それはそうだか。わしにそんなことは出来ん」
「大丈夫ですよ。ご主人さまは、お金が手に入れば、すぐに遠くへいってくださいそうですね。もうすく着く絳州から西二十里のところに大きな木がありますから、そこでわたしを待っていてください」
「だ、大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ。さもないといまはどうしようもないでしょう?」
「それもそうだが・・」
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