「そうしなさいよ。わたしがうまくやりますから」
ということになり、殷さんは絳州の町に入り、にぎやかなところの道端で、わざと大きな声で鸚鵡と話し始めた。するとすぐに人が集まってきて、殷さんの鸚鵡の賢さに驚いた。
「へえー!この鸚鵡は、人間の言葉をかなり学んだらしいね」
「そうだな。こんなに話がうまい鸚鵡を見るのは初めてだ」
見物人たちは口々に鸚鵡を褒めていると、そこにこの町の大官の手下が通りかかり、人が集まっているのを見てどれどれと見物人をかき分けて中に割り込んできた。そして殷さんと鸚鵡のやり取りを見て「うん。これはかしこい鸚鵡だ。ご主人さまはきっとよろこばれるにちがいない」と思い、さっそく屋敷に戻った。
「旦那さま。旦那さま。いいことがあります」
「なんだ?」
屋敷の書斎で大官がお茶を飲んでいた。
「先ほど、わたしめは町で何でも話せる鸚鵡を見つけました」
「なに?何でも話せる鸚鵡だと」
「はい。わたしめはそばで暫く聞いておりますたが、それは賢い鸚鵡でござりました」
「それは、それは。いいか、いくら金を払ってもいいから、その鸚鵡を手に入れろ!」
ということになり、手下はこれで鸚鵡が好きな主人をよろこばせ、自分は褒美をもらえるとほくほくしながら、金をもらってかの道端に来た。
そこでは殷さんがあいかわらず鸚鵡と話していて、見物人の一人が鸚鵡を買うため懐から金を出そうとしていたところ。これをみた手下があわてて大声を出した。
「おう!まちな!その鸚鵡はうちの旦那さまがもう買われたんだ。余計な手を出すなよ」
これを聞いた見物人たち、この手下がこの町の大官の屋敷のものだと知っているので、みな後ろに下がった。そこで手下は殷さんいいう。
「おい!うちの旦那さまが、あんたの鸚鵡をかなり気に入ってね。売ってくれるだろうな」
これに殷さんはいくらか驚いたが、もともと鸚鵡のいうとおり売る気であったから、頭を縦に振る。
「だろう!?で、いくらなんだい?」
「そ、それは高ければ高い方がいいんですが・・」
「そうそう、それが商人というもの。じゃあ、こちらで値段を決めよう」
「それはけっこうですが、この鸚鵡のこと、あまり安いと困るんですよ」
「まかしときな。うちの旦那さまはけちな方じゃねえ」
「はい」
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