「お前さんに一儲けさせてやるわい」
「で、いくらでお買いになりますか?」
「そうだな。うちの旦那さまのことだ。安くは買わないよ。うん、銀八十両じゃあどうだ?」
「え?銀八十両ですって?」
「安いかえ?」
「いえいえ、とんでもない。売ります、売ります」
ということになり、殷さんは銀八十両をその場でうけとり、鸚鵡をかごと共にその手下にわたし、鸚鵡に言われたとおり、その場を離れていった。
こちら手下、目当ての、鸚鵡が入った鳥かごを手にホクホク顔で屋敷に戻り大官に渡した。そこで大官は暫く鸚鵡を目を細くして品定めのように見ていたが、そのうちに鸚鵡が話し出した。
「これはご主人さま、始めまして。これからがかわいがってくださいませ」
これに大官はびっくり。
「これはこれは、なんと賢い鸚鵡じゃ。わっはっはっは!」
そこで手下がすかさず言う。
「どうです?旦那さま。賢い鸚鵡でございましょう。お気に召されましたか?」
「うん、うん、気に入った。お前、今日はでかしたぞ。さ、褒美として銀三十両をくれよう」
「これはこれは、どうもありがとうございます」
こういって手下は褒美をもらい、ニコニコ顔で下がっていった。
さて、こちら大官、久しぶりに面白いものが手に入ったので、その日は鸚鵡と話してばかり。もちろん、鸚鵡も大官に答えいろいろしゃべった。これに喜んだ大官は、鸚鵡は普段は飛ばないと知っており、その上、あまりにもこの鸚鵡が気に入ったので、鸚鵡をかごから出して手の上に置いた。鸚鵡はそれでも一生懸命しゃべり、飛び立つ様子を見せない。
「ひひひ!よしよし、鸚鵡や、今日からわしがうんとかわいがってやるからな」と興奮し、そのまま庭に出た。と、そのとき、今だと鸚鵡は羽を広げ、飛び立った。
「あ!これこれ、わしの元へ戻っておいで」と慌てて叫ぶ大官をほったらかして、鸚鵡ムはなんと空に舞い上がり、そのままこの町の西の方へと飛んでいく。これを見た大官、かの手下を呼び、鸚鵡を売った者をすぐ探して来いと命じた。が、殷さんはもう町にはいない。殷さん、そのときには町から西二十里のところにある大きな木の下で鸚鵡を待っていた。殷さんはかなり心配で、今か今かと苛立ったが、そのうちに大事な大事な鸚鵡が戻ってきたので、すぐさまそこを離れ、遠くの町に行ってしまったそうな。
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