今度は、「杯中の蛇影」。昔の本である「晋書、楽広伝」からです。
河南の長官楽広に親友がいて、長いこと会っていない。と、ある日、この親友が訪ねてきたので、どうして長い間訪ねに来なかったと聞いた。そこで親友は答えた。
「この前来たとき、酒をご馳走してくれただろう」
「うん。それがどうかしたか?」
「実は、その酒を飲もうとしたとき、杯の中に蛇を見たので気持ち悪くなったんだ。でもせっかくだからと無理して飲み、家に戻って床に伏してしまったんだよ」
「なんだと?あのときの酒で病に?本当か?」
丁度このときも、この前と同じように、部屋の壁には蛇の絵の書かれた弓が掛かっていたので、楽広はその弓をチラッとみたあと、この親友が見た蛇とは、この蛇の絵が杯に映ったのだと悟り、相変わらず酒と肴を出して酒を注ぎ、前回この親友が杯を置いたところに今度も杯を置いた。
「どうだい?杯の中に何が見える?」
「うわ!楽広。この前と同じだ。酒の中に蛇がいるよ!なんとかしてくれ!」
「まあまあ、そう慌てるな。あの壁に掛けた弓をみてみろ」と杯の中に蛇の影が映った原因を親友に説明した。
これには親友。「ええ!そうだったのか!なんだ。おかげでこれまでの病も治ったよ」と答えたそうな。
物事を気にしすぎ、疑い深くなって自分を苦しめる必要はありませんね。
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