劉伶は、この酒はうまいなと大きな盃で三倍飲んだところ、酒の勢いのすごさがわかり、これはいかんと思い、「いい酒だ!」と言いながらも瞬く間に頭がふらつき、店を出ようとして慌てて席を立ったが、酔ったので足元に置いてあったかの酒樽をひっくり返し、よたよたと酒屋を出て、どうにか家にたどり着き、床にぶっ倒れてしまった。
これを見た劉伶の妻が慌てて、お茶を入れたり、頭を冷やしたりして介抱し始めた。ところが、劉伶はその日から三日昏睡し続け、四日目には死人同様となったらしい。これに妻は嘆き、隣近所が慰める中で、劉伶を棺に収め埋葬した。
やがて、三年の月日が流れたある日、かの酒屋の親父が劉伶の家に来た。そこで、劉伶の妻がでた。
「ここは劉伶どのの屋敷かな?」
「そうですけど。何かご用でしょうか?」
「いや、実は三年前に劉伶どのがわしの店で三杯の酒を飲まれて、また酒樽をも蹴倒されましてな。酒代を置いていかれなかったので、今日はこうして代もらいにきましたわい」
これを聞いた劉伶の妻、「なんですって?うちの主人はあんたの店のお酒飲んで死んだんですよ!人を殺しておいてなんと欲張りな!夫を返してください!」とカンカンになって怒り出し、親父の袖をつかんで役所に訴え出ると言い出した。
そこで親父がなだめていう。
「劉伶どのは、死んではおりませんよ。ただ、かなり酔って眠っておられるだけでござる」
「なんですって!3年も酒に酔って寝るんですか?でたらめもいい加減にしてください!」という劉伶の妻の叫びに、集まり寄ってきた隣近所も、わいわいがやがや!
「そうだ!そうだ!そこの爺さん、でたらめいうな!」
こうして騒ぎは大きくなるばかり。
そこで、親父は、「じゃあ、みなさんにその証拠をお見せしましょう」とみんなを後に、劉伶の墓場に行き、劉伶の妻が止めるのもかまわず、若い者に手伝わせて墓を掘り、棺を取り出した。
「さあ。奥さん、これがあんたの旦那が、当日わしの店で書かれたものじゃ!」とかの劉伶の書いた証なるものを妻に渡して、棺のふたを開けた。
すると、棺の中では、劉伶がちょうど酔いからさめたところで、目を開けて大きなあくびをし「ああ!いい酒だった。なんとうまいことか」とニコッと笑ったという。
で、かの酒屋の親父だが、彼は杜康だったのさ!
実は、杜康と同じく酒仙として天に召された劉伶が、酔って天の王母の瑠璃造りの酒壷を壊したので、罰として下界に落とされたものの、かれは尚もひどい放談痛飲の態を繰り返すしていた。そこで劉伶をいくらか懲らしめるため、同じく天に召され酒仙となった杜康に命じて、下界に降りて九竜山の麓で酒屋を開いて劉伶をまち、酒をいくらか慎むように彼を3年間酔い眠らせたとのこと。そして時が来たので、杜康に劉伶を迎えに行かせたのだそうな!へー!?なんじゃらほい?
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