と、そのとき、それまでまっすぐに天から下がっていた縄が、不意に落ちてきた。これに男はびっくり。そして急に悲しみだした。
「なんということだ。天で誰かがわしのこの縄を断ち切ったぞ。これではわしの息子は、どうやって天から降りてくるのだ!どうしよう!」
これに役人や見物人も驚き、自分たちはなにもできないので、これからどうなることか、必死に見守っている。と、何かが天からドンという音がして地上に落ちてきてた。男がみると、なんとそれは息子の頭であった。これを見た男は泣きながらこの頭を両手でもち、「息子が桃を盗んだときに、天の桃畑の見張りに見つかったんだ」とわめいた。すると今度は一本の足が天から落ちてき、更に体の部分がばらばらになって落ちてきた。これに男は慟哭しながら、息子の遺骸を一つ一つ集め、これらを箱に入れて、驚いて固唾を呑んでいる見物人に言った。
「みなの衆、わしは一人息子との二人暮しですわい。息子はわしについてこれまで方々を回ってきました。今日はここで役人さまの言いつけに従い、天に登って桃を盗みに行きましたが、なんと、こんなことになるとは!!これから息子を手厚く葬ってやります」
こういって男は役人の前まで来た。
「役人さま方、わしの息子はあなた方の言いつけで天に登り、あなた方のために死んでしまいました。役人さま方がもし哀れだと思いなさるのなら、わしが息子を葬りますので、そのためにお金を出してくだされや。そうしてくださるのなら、わしはあなたさまがたを恨むようなことはしません。どうかお願いします」
これを聞いた役人たちは、急に責任を感じたのか、または天に登って死んだ男の息子を哀れんだのか、それとも、これから死んだ息子の亡霊が現れるのを恐れたのか、それぞれ思ったより多くの金を出し合い、この男に渡した。
と、この男、沢山の金が手に入ったのを見て急ににやっと笑い、息子のばらばらの遺骸が入っている箱のふたをコンコンと叩き、「これこれ!息子や、早く出てきな。役人さまがたが沢山の褒美を下さったぞ」と声を掛ける。
これに役人や見物人はまさかと目を見張っていたが、しばらくして箱が空き、やまあらしのような髪の毛を生やしたかの子供が元気に出てきて、役人どもにペコリとお辞儀すると、男と一緒に早足でどこかへ行ってしまったわい。
これを見た役人や見物人はあいた口がふさがらなっかとさ!!はい、はい!
そろそろ、時間のようです。では来週またお会いいたしましょう。
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