こうして江さんはアカシアの樹に礼をいうと、翌日、支度をしたあと一人で荊山に登った。それは大変だった。幾つもの峰を越え、多くの川を渡り、数日かかかってやっとのことで仙人を捜し当てた。そこで江さんは土下座して弟子にしてくれと頼んだ。
「うん?お前が誰からわたしのことを聞いたのじゃ?うそをついてはならんぞ」
「はい。実は霊仙閣のちかくの大きなアカシアの樹が教えてくれました」と江さんはありのままを話した。これを聞いた仙人は怒った。
「なんということだ!奴が私のことを教えるとは!今から行って懲らしめてやる」
これをみた江さんは必死になって謝った。
「先生、どうかあのアカシアの樹を許してあげてくだされ」
「いや。いま奴を懲らしめないと、これから弟子にしてくれというものがあとを絶たんようになる。それにお前はなんだ?わたしに何を学ぶというのだ?お前は何が出来るか言ってみろ」
「は、はい。私は道教を信じており、笛が吹けます」
「では、ここで吹いてみろ」
そこで、江さんは荷物から笛を取り出し、一生懸命に吹いた。
これを聞いた仙人は、怖い顔をしなくなり、暫くそれを聞いていた。
「うん。笛はうまく吹けるようじゃな。ただ、その笛ではいい音色が出ない。わたしの笛を学びなさい」
この仙人の言葉に江さんは喜んだ。
「本当でございますか」
「本来なら弟子にはせんところだが、お前は年を取っているだけに、笛の吹き方を知っておるゆえ、教えるのだ」
「ありがとうございます」
「まあよい。で、この荊山の笛を吹くには、お前は三年は頑張らなくてはならん。そうすると洞窟に棲む竜を呼び出すことが出来る」
「洞窟に棲む竜を?」
「そうじゃ。その竜は口に夜光る玉を咥えており、その玉をお前にくれるだろう。そこでお前はその玉を三日間煮るのじゃ。すると若い竜がきて頭が痛いといって仙丹とその玉を換えてくれといいに来る。そこでお前はその仙丹と玉を換えるのじゃ」
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