その数日後、江さんは、再び自分が酒を飲んだあと寝てしまったかの大きなアカシアの樹の下に来た。そして夜半になって用意してきた酒やつまみを地べたに敷いたゴザの上におき、手を合わせていう。
「これは、これはアカシアの樹さま。この前は酒を飲んでここで寝てしまい、どうも失礼なことをいたしました。そしてわたしめが草むらに隠れたとき、あなたさまともうお一人のかたとのお話を聞いてしまいました。どうでございましょうか。ここにお酒とつまみがございましゆえ、わたしと話をしてくれませんか?」
すると、徳利がひとりで空中に浮かび、酒を飲む音が聞こえた。そしてそれまで黙っていたアカシアの樹がこたえた。
「これは、丁寧な人間どのでござるな。わしの下で寝ていたのはあんただったのか?ま、わしは気にしておらんよ。ところで、あんたはわしにどうしろというのだね?」
「実はわたしは、道教を信じており、これまで良き師にめぐりあえませんでした。そこであなたさまについていろいろ学びたいのですが、お願いします。そのお礼は必ず忘れませんから」
こういって江さんは、また新しい徳利をゴザの上に置いた。するとアカシアの樹は答える。
「そうでござったか。わしは修行が浅いのであんたには何も教えることは出来ない。そこである先生をこれから探しなさい。その方は仙人じゃ、荊山にいてな。ま、陸にいなけれは、水の中にいるはずじゃ。その先生に教われば、きっといいことがあるにちがいない。」
「あの~。仙人ですね」
「うん。しかし、今日ここでわしがこんなことをあんたに言ったと人にもらしてはいかん。これもあんたの真心に打たれたので教えただけのこと。もしあんたがこのことを人に漏らせば、わしは罰を受けることになる」
「わかりました。絶対に人にはもらしません」
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