10月16日から19日まで、中国中部の省である河南省で「第2回世界伝統武術フェスティバル」が行われました。
このフェスティバルは少林寺を中心とした中国武術の祭典で、全世界から中国武術を志す人たちが集うお祭りです。少林寺の歴史は、西暦527年、あの達磨大師が禅宗を創始したことによって始まります。この少林寺の修行僧と、民間の人たちによって受け継がれてきた伝統武術の総称、それが少林拳です。
少林拳というと、どうしても映画「少林寺」などのイメージがあって、両者が対決する・・・というイメージがありますが、現在、競技として行われている少林拳は少し異なります。いわゆる表演拳といわれる体操の規定演技のようなものなんです。審査員がいて、その目の前で型を披露し、点数で競うというのが一般的です。選手は、刀、もしくは長い棍棒を自在に操って、ダイナミックな動きを披露します。バク転や宙返りなど派手な動きも加わるんです。「大きく、早く、スピーディに」という芸術的な要素が最も重視されるのが、現代の少林拳というわけです。そして、この少林拳を中心とした中国武術の祭典、それが今回の世界伝統武術フェスティバルです。
この世界伝統武術フェスティバルは、2004年に続いて2回目となります。世界66の国と地域から2200人が参加する大イベントです。フェスティバルでは、武術に関するシンポジウムなどを始め、様々なイベントが行われたんですが、その中の3つをご紹介したいと思います。
まずは、まさにその少林寺で行なわれた、フェスティバルのメインイベント、「少林寺歓迎セレモニー・5万人の少林拳」です。
河南省の省都、鄭州市からバスで1時間半、登封市に少林寺があります。実はこの登封市は、まさに武術の町。市内には83の武術学校がずらりと立ち並んでいます。そして、そこで学ぶ生徒の数は15万人。そのうち、地元の人は10万人いるそうでして、登封市の人口が62万人ですから、その武術の町ぶり・・が良くわかると思います。
少林寺に入ると、壮大な出迎えが待っていました。たくさんの子ども達、少林寺で修行する子ども達が数千人、いや一万人はいるでしょうか・・・あちこちで少林寺の演技を披露しています。
小学生くらいの子ども達が一糸乱れぬ演技を見せています。続いて高校生くらいでしょうか・・16,7歳くらいの少年がこちらに近づいてきました。総勢100人くらいがそろいの服を着て、武とかかれた紅色の旗を持っています。
また小学生くらい、女の子だけで作られた200人ぐらいのチームです。ピンク色の道着で、一生懸命披露しています。
敷地内の一角では、まさに文武両道というわけで、年のころ6,7歳の男の子の修行者が中国琴の演奏をしていました。
本場で修業に励む5万人が一斉に演じる少林拳に我々も圧倒されたという感じでした。でも、フェスティバルの目玉はまだあります。この日の夜、この少林寺のある嵩山(すうざん)を舞台に鳴り物入りの舞台が上演されました。
その名も「禅宗・少林」という舞台なんですが、いわば少林拳をモチーフにしたミュージカルといわんばかりのもので、総勢1000人の出演者が、少林拳の鮮やかな技を披露しながら、所狭しとステージをかけめぐります。そしてこのステージがまたスケールが大きいんです。ステージというよりも、本物の岩山、林、池をそのままつかってステージに仕立てている・・端から端まで数百メートルありまして、その自然の舞台を縦横無尽に少林拳の達人達が走り回ります。総制作費3億5000万元、40億円を少林寺のお寺が出して作った・・監督はグリーンディスティニーの譚盾(たんじゅん)監督を迎えた光と音のスペクタクル少林寺ファンタジーです。
世界伝統武術フェスティバルは、この2つのイベントと平行して、武術大会も行われました。世界66の国と地域から2200人が出場して、太極拳、少林拳など中国武術、各部門で腕を競いました。そのうち、日本人選手の皆さんも大活躍だったんです。海外では最多の72人の選手団を送り込み、金メダルもいくつか獲得しました。
日本は中国と距離的に近いこともあって、早いうちから中国武術の先生がやってきて、武術を広めたそうです。そのかいあって、世界でもトップレベルの力をもっているそうです。
今回の伝統武術フェスティバル、実はご紹介しきれないほど、まだまだ多くのイベントが行われました。たった4日間ではありましたが、まさに中国武術の奥深さを肌で感じた、そして中国武術の面白さを堪能した4日間でした。
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