今から約3000年前という、紙もないし、ハサミなどもない時代には、人々は、尖っている石の塊を道具として、木の葉や動物の皮に、一つ一つ小さな穴を開け、開けた後の木の葉や動物の皮を、飾り物として体につけていました。
漢の時代には紙が発明され、人々は、木の葉や動物の皮よりはるかに作業がしやすい紙を素材として、さまざまな模様を彫りました。
その後、ハサミやナイフなどの道具ができ、切り紙は、宗教活動や祭祀の儀式でもよく使われるものになりました。紙で作った動植物や人の姿などの図案の切り紙を死者と一緒に埋め、または葬礼を行うときに焼き払って、生き物の代わりに死者の副葬品にしていました。
史書によると、唐の時代、女性は切り紙を飾り物として頭に貼ったりしました。また、宋の時代、窓や壁、鏡、提灯などに貼り始め、これを職業とする職人もいたということです。こうして、一つの飾り物から独立した工芸に発展しました。
ハサミ一丁と紙一枚で切り紙を作るのが難しいとはいえませんが、サイズが異なる各種のハサミと彫刻刀などを利用して、複雑な図案の切り紙を作るのは簡単な作業ではありません。
切り紙の作り方は、一枚一枚を切ったり、何枚もの紙を重ねて一回で切ることもあります。また、簡単な図案のものはいいですが、複雑な図案の切り紙は、まず設計された図案を印刷し、その後、適した彫刻刀を選び、図案に沿って紙を刻んでいきます。間違ったら、全部無駄になるので、ほんの少しの間違いも許されない作業です。
切り紙の題材は豊富多彩で、花、鳥、虫、魚、動物、植物、伝説中の人物、古典文学作品に出た人物、京劇のくま取りなどがあります。各地の人々の生活習慣や審美眼が異なっていることから、地域によって特徴が違います。例えば、北方の切り紙は豪放で、力量感に溢れ、南方のは精巧で細かく美しいです。
現在、中国には、切り紙工芸工場、切り紙芸術協会があり、定期的に切り紙展示会が開かれ、技術交流が行われています。舞台美術、新聞や雑誌、挿し絵、映画、テレビなどで、独特な表現法を取りいれています。
社会の発展に伴って、その技術を学ぶ人が少なくなってきているというのが現実ですが、専門職人をはじめ、社会全体がともに努力すれば、切り紙には新たに発展する道が開かれるでしょう。
「現在、人々は、家を飾るなら、自分のすきな歌手やスポーツ選手のポスター、写真などを壁にかけますが、いつか、切り紙を掛けるようになってほしいです。私たち切り紙の職人たちは、これを目標として、努力していきます。」(中国切り紙芸術大師・徐陽)
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