今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今頃になると、北京で言う「秋、一雨ごとに寒さが増す」という言葉が本当だとそう思いますね。まさにそうですね。ま、夏は暑いといっても、北京は北国ですから、そうなるはず。何を言ってんでしょうね。
で、今日のこの時間は西南部の四川につたわるお話をご紹介いたしましょう。
題して「飛来峰」(飛んできた山)です。
「飛来峰」
むかし、むかし、四川の峨眉山一帯にちょっと変わった小さな山があった。いつのことか知らんが、この山はほかのところから飛んできて、そこにあった多くの家がつぶされ、たくさんの人が死んだという謂れがあった。しかし、それは大昔のことだと、当時の人はあまり信じず、ある人はうそだと言う。
で、地元の湖ー西湖のほとりにあるお寺霊隠寺に一人の変わったお坊さんがいて、仏門の決まりをあまり守らず、いつもふだぶらし、時には狂言染みたことを吐くので、人々はこのお坊さんをふうてん和尚と呼び、お寺からも嫌われていたが、なにしろ名僧を師匠さまをもつというので寺の住職も片目をつぶっていたという。
ある夜、このふうてん和尚は、どこから知ったのか、かの小さな山が、この日の夕方ごろに霊隠寺近くの村に飛んでくるのを悟り、多くの人が山の下敷きになるのを恐れ、朝早くから村に赴き、一軒一軒回って、今日の夕方にかの山が落ちてくるので速く逃げろという。
しかし、村人は、いつもぶらぶらしているこのお坊さんを馬鹿にしていたので、誰もこれを信じない。
ある爺さんがいう。
「ふうてん和尚さんよ。人を馬鹿にするのはよしたほうがいいよ。あんたにそんなことがわかるわけがないだろう」
これに隣りが同調する。
「そうだよ。山が飛ぶなんてむかしのいわれだろう。鳥が飛ぶのはわかるけど、山が飛んで来るなんて信じられんよ。和尚さん、そんなこと言ってると、そのうちに霊隠寺から追い出されるよ!気をつけな!」
「それに、わしらは貧乏人じゃから、引越しなんか出来ないよ。もし山が飛んで来てつぶされても、運が悪かったとしかいえないよ」
と、村人たちは相手にしない。
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