では次にむかしの笑い話を二つご紹介しましょう。
「笑林広記」という本から「草書」です。
「草書」
家計が豊かな張さんは、書道が好きで、ある程度まで学んだが、それ以上は苦心しなかった。しかし、自分ではこれでいいと思い、なんと次の年に隣の県へ引越し、暇だといって、よせばいいのになんと書の塾を開いた。そこで地元の若いもんが弟子入りしてきた。
と、ある日、屋敷の書斎で寝ていると、弟子が来て「先生、書道には草書という書き方があるようですが、一度わたしに草書というものを見せてください」という。
「なに?草書?お前はまだ見たことがないのか?では先生が草書をひろうしてやろう」と弟子に墨をすらせ、筆をとってすらすらと何かを瞬く間に書き終わった。
「いいか、これが草書というもんだ。いったい先生がなにを書いたか、家に帰ってよくみてみろ」
こうして弟子は草書が書かれた紙を大事に持って帰ったので、張さんはいい気になってまた寝た。
で、その日の夕方、張さんが酒を飲もうとしていると、かの弟子がやってきて昼間書いてもらった草書だが、いくら頭をひねっても何が書いてあるのかわからないので、どうか教えてくれという。
そこで張さんは自分が書いた草書と眺めておったが、急に困った顔になり、それから怖い顔をして怒鳴った!
「どうしてもっと早くもってこなかった!今となってはこの先生のわしにもわからん!」
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