「そうか。ふうてん和尚のいうことをわしらが信じないので、こうして花嫁奪って逃げ、みんなにそれを追わせここまでつれてきたんだ」
「そうだ!そうだ!おかげでみんなは助かったんだ」
「ありがたい!ありがたい!」
こういって村人たちは、ふうてん和尚に礼を言い始めた。
こちらふうてん和尚は、みんなが礼を言うので照れていたが、そのうちに誰かが、「わしらの住むところはなくなったぞ。これからはどうすればいいのだ!」と嘆き始めた。これをきいた女子や子供たちは泣きはじめたので、命は助かったものの、これからはどうしようとみんなは呆然となった。
そこでふうてん和尚が言う。
「みんなはあの意地悪な地主の畑を耕していくらかの金をもらい生きていたんだろ!あの地主一家は、みんなを馬鹿にして一緒に逃げてこなかったから今頃は山の下敷きになってお陀仏だ。だから地主のたくさんの畑はみんなのものになったんじゃ。畑があれば暮らしていける。そうじゃないか!」
このふうてん和尚の諭しにみんなは「そうだ!暮らしていける」とそれぞれ答えた。どうにか村人たちは元気付いたようである。そこでふうてん和尚がまたいう。
「みなの衆!きいてくれ!あの山は、ほかのところから飛んできてみんなの村に落ちたんだぞ。ということは自分で飛ぶことが出来るんだ!つまり、これからもどこかへ飛んでいくかもしれん。そうなれば沢山の人が押しつぶされるに決まっている。そこでわたしからお願いがある」
「なんだ!いってくれ!命の恩人のあんたの言うことなら何でもやるぜ!」
「そうだ!そうだ!」
「それはありがたい。ではいうが、あの山が二度とほかのところへ飛んでいかぬようにするため、山の上の岩壁に五百の羅漢像をほってくれんか!そうすれば、山はおとなしくなってもう飛ぶようなことはせんじゃろう」
「わかった!わかった」ということになり、村人たちは、村のあったところろに落ちた山に登り、岩壁に五百の羅漢像を彫った。ところが目のところがうまく掘れない。そこでふうてん和尚は寺から道具を持ち出し、これら五百の羅漢像に目をつけたと。こうしてこの山は、五百羅漢の睨みの下におとなしくなり、それからはどこへも飛ばなかったそうな。もちろん、村人たちは、その近くに新しい村を作り、みんな一生懸命に働き、それぞれ幸せに暮らしたという。
あ!そうそう。このときからこの飛んできた山は「飛来峰」と呼ばれるようになったとさ!!
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