こうしてほとんどの村人たちがふうてん和尚のあとを追ったが、この村の金持ちである地主は、いつもいじめている貧乏人のことには普段から気にかけていないので、そとで騒ぎがあっても「ほっとけ!ほっとけ!わしらには関係ない」と家からは出てこなかった。
さて、こちらふうてん和尚は、後ろから多くの村人たちが自分を追ってくるので、これは遠ければ遠いほうがいいと思い、一生懸命走り出した。ところが和尚に担がれている花嫁は何がなんだかわからない。それにふうてん和尚のことを知っているので、びっくりしたのと恐ろしさが交わり、「助けて!」と悲鳴を上げ続ける。これを聞いて村人たちは必死に追いかける。しかし、どうしたことかこのふうてん和尚の足ははやく、人を担いでいるというのに平気で走っていく。
どれだけ走っただろう。西の空に日が沈むころになって、ふうてん和尚は、ある谷間まで逃げてきて、もういいだろうと走るのを止め、気を失った花嫁を下ろすと、近くの岩の上にハーハー言いながら寝そべった。するとかの花嫁が気が付き、ワーワーと鳴き出した。これをみた和尚がいう。
「花嫁さんよ。驚かしてすまなかったな。わたしはあんたには悪いことはしない。ただ、村人たちはわたしの言うことを信じないので、こんなことをしでかしたのさ」
これに花嫁はかまわず、まだしくしくと鳴いている。そこへ、大勢の村人たちは追いついてきた。
「なんだ!この坊さんめ。何をしでかしたんだ!許さないぞ」とみんなは和尚を殴ろうとした。
「まあ、まあ、村人たちよ。私の話を聞いてくれ」
こうしてもみ合いが始まったとき、急に空が暗くなり、雷がなったかと思うと、強い風が吹き出し、「ドドドドーン」という地震が起きたようなものすごい音がした。これにはみんな慌てふためき、その場にふせたり、逃げ回ったり。中には腰を抜かしたもののいる。
やがて雷も風を止み、あたりは静かになったので人々は一体何事かと首を傾げ始めた。そにうちに誰かが叫びだした。
「ああ!みんあな遠くをみてみろ。あそこはわしらの村があるところだぞ。なんということだ!山になってるぞ」
この声にみんなはその村人が指差すほうを見た。するとどうだろう。いままで自分たちが住んでいた村のところに、山がデーンと落ちているではないか!!
「うわ~!もしか村にいたらあの山の下敷きになってみんな死んでいたぜ」
「ホントだ!危なかったな!」
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