しばらくして張玉書が応接間に現れたので、春花は泣きながら跪き、自分の夫のことを細かく話したあと「お願いします。この義理の娘の夫をお助けください」と願った。
「ははは!わしにはそのほうを義理の娘にする資格などはござらん。しかし、義理に父さまに代わって、隠居の私がなんとかしよう。二人とも安心して屋敷に泊まっていなさい」といい、執事にこの二人を大事に扱うよう命じた。もちろん、執事やほかの屋敷の者はこんな農民をどうしてと不思議がるばかり。
さて、張玉書はそれから執事に、春花が言ったことがホントかどうかを役所に調べに行かせた。しばらくして執事がもどり、確かに春花の夫が人殺しの罪で牢獄にぶち込まれているという。そこで張玉書は暫く考えてから、二人の下のものに県令が事件を裁く部屋に「張」という大きな文字を書いた提灯を今晩のうちにこっそりとぶら下げておくよう命じた。
次の日、県令がいつものように事件を裁くために出ると、なんと天井に大きな二つの提灯がぶら下がり、それぞれに大きな「張」の字が書かれている。
「なんだ?あれは!無礼者めが!誰かあの二つの提灯を下ろせ!」といった途端、「張」の字を思い出し、この二つの提灯は地元に住むかつての高官である張玉書のこのだとさとり、慌ててほかの事を放り出して、供を連れ張玉書の屋敷をたずねに来た。
で、応接間で迎えた張玉書は、何がへまをしたので叱りを受けると思ってびくびくしている県令にいう。
「いや、忙しいところをご苦労であった。」
「これはこれは、何が私めがへまをやらかしましたのでございましょうか?どうかお許しくだされ」
「実はな。数日前にそちは天秤棒で人を誤って死なせた農民を牢獄にぶち込んだであろう」
「え?それは・・。あのものは確か天秤棒でうしろにいた男を殴り殺したのでございます。天秤棒が男の頭に当たったのみた証人が多くいます」
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