さて、今日のこの時間は、中国の医術にまつわる小話をご紹介しましょう。
まずはじめは「出玉堂閑話」という本から「鼻で吸う酒薬」
「鼻で吸う酒薬」
曹州に申光遜という判官がいた。生まれは南の桂林だという。実は地元に孫仲敖という役人がおり、申光遜とは同じ桂林生まれだというので、申光遜は親しみを感じてある日孫仲敖の屋敷を訪ねた。ところが通されたの孫仲敖の寝室だった。これはどうしたことかと思った申光遜を出迎えたのは床を出たばかりで顔も洗っていない孫仲敖であった。
「これはこれは判官どの。こんな格好でお迎えして失礼したした。私も起きてからは顔などを洗いたいのだが、実は持病がありましてな。これまで長い間常に頭が痛み、顔を洗ったりする後に痛みがひどくなりますので、困っております」
すまなそうにいう孫仲敖を見て申光遜がいう。
「そうでありましたか!いやいや、ご病気とは知りませんでした。私は気を悪くはしておりません」
「判官どの、そのお言葉を聞いて安心しました。実に無礼なざまです」
「ところで、孫どのはこれまで医者に見てもらいましたかな?」
「もちろん、わたしは持病にこれまで苦しめられましたからな。これじゃあ仕事もうまく出来ませんよ」
「なるほど」といって、申光遜は孫仲敖の顔色をじっと見つめ始めた。
これには孫仲敖はいくらか戸惑った。
「どうなされた?判官どの。私の顔になにかついておりますか」
そこで申光遜はいう。
「実は、私の祖父と父は医者でしてね。私も若いころは医術を学んだことがあり、のちにどうしたことか、風向きがかわり、いまでは判官という職についておりますが、孫どの病についてはいくらか心得がありますので」
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