やがて、孫仲敖は全身びしょぬれになるほどの汗をかき始め、そのうちに目を覚ました。
「どうでござる?孫どの?気分はどうかな?」
「あ!これは判官どの。わたしはあまりにも強いものが頭に上ったので、気を失ったようですな。実は死ぬかと思いましたよ」
「死にはしません。ただ、貴公の頭につまったものを散らしただけでござる」
「な、なるほど」
「で、孫どの。貴公の頭はまだ痛いかな?」
「え?わたしの頭?そういえば、痛みはなくなったようでござるな」
と孫仲敖は頭をなでながら何度もふってみたが、痛みはなくなっていた。
「おお!痛くありませんぞ。治りましたぞ」
こういうと孫仲敖は床をおりて、子供がはしゃぐように飛び回った。
こうして申光遜は孫仲敖の持病を治した。そこで孫仲敖はかなりの金銭などを下のものに持ってこさせ、自分の病を治してくれた礼にと申光遜にさしだしたが、当の申光遜は、自分は金のためにやったのではないといってどうしても受け取らない。これに感動した孫仲敖は、このときから申光遜を敬い始め、その後は二人は無二の親友になったとさ!
これは余談だが、この酒で混ぜた薬を鼻から吸って病を治す医術は、中国では西南部の少数民族の間ではかなりつかわれていたという。
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