「まったくだ!しかし、あの男、どうもどこかが悪いようだな」
「そうだな。横に杖があることから、足腰を悪くしているらしい」
「どうだい。せっかくだ。わたしたちもいいことをして、あの男の病を治してやろうじゃないか」
「そうだな。それがわたしたちの役目みたいなもんだからな」
「うん、じゃあ、そうしようとするか」
とこの二人の書生らしきものは、酒を飲んでいる陶俊のところに来た。
「これはこれは、お一人でお楽しみかな」
「うん?お前さんたちは誰じゃな?どうも知らん顔じゃが」
「そんなことはどうでもいいでしょう。ところで、あんたどうも足腰が悪いようだね」
「え?どうしてそれがわかるんだい?」
「だって、横に杖があるよ」
「お!そうか。これじゃあ仕方がない。あんたたちのいうとおり、わしはかつての戦で飛礫にやられて腰をいため、そのうちに足も悪くなってな」
「医者にみてもらったのかね」
「ああ。うちの主はいい人でね。金を出して医者を何人も呼んでくれたが、あいにく、治せる医者はいなかったよ。仕方ないよ。でも、近所の人々がよくしてくれるよ」
「あんたは、弱いものの味方だっていうじゃないか」
「ああ。なんてことはない。どうせ、この体だ。人に少しでも役立てばと思ってやってるだけさ。おかげでみんなと仲良くなれて、渡し場にいるが寂しくはないね」
「これは見上げたもんだ。あんたいい人だね」
「人をおだてないでくれよ」
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