さて、今日のこの時間は、清の時代の短編怪奇小説集「聊斎志異」から「胡家の四旦那」というお話をご紹介しましょう。
「胡家の四旦那」
いつのことがはっきりわからん。山東の莱蕪というところに張虚一という若者がいた。ここでは張さんにしておこう。この張さんは、肝っ玉が太く小さなことにはこだわらない人物。それに物好きでもあった。
と、ある日、となりの町の、長いこと空き家になっていたある屋敷に何かが住み込んだらしいとのうわさを耳にした。張さんは、「これは面白い。いったいどなたが住み着きなさったのかな?」と名刺をもって、翌日、下男を連れてとなりの町にいった。そして町のはずれにあるその屋敷を捜し当て、名刺を玄関の門の隙間から差し込んだ。しかし、大きな門はすぐには開かなかったので、ついてきた下男がいう。
「若旦那。帰りましょうよ。きっと空き家ですよ。誰も住んでいませんよ。何かが住み着いたなんていうのは、きっと暇な人間が流したデマですよ」
「いや。ほんとかもしれんぞ。ま、もう少し待っておれ」
と、張さんは、今度は門を軽く叩いた。すると、不意に門が中なら開いたではないか。これを見た下男、びっくりして、なんと主人をおっぽり出してどこかへ逃げてしまった。
「なんだ、おまえ!!どこへいく!」と張さんは逃げていく下男を叱ったが、どうにもならない。そこで振り返って開いた門の方を見ると門を開けたものの姿がない。
「うん?あのー!えーっと。私は張虚一と申すものですが・・えーっと、門が開いたということは、中に入ってよろしいのですね。では、では、失礼!!」
こうして張さんは緊張して屋敷の中へ入っていった。
大きな庭には古木が多く、長い間空き家だったせいか、雑草が高く生え、荒れ果てていた。しかし、部屋に入るときちんと整理され、とても静かであった。そこで張さんは一礼して言った。
「私は、ご主人に会いたくてここに参りましたゆえ、ご主人は私の気持ちを察して中へ入れてくださったのだろうと思います。そこでお願いがござる。どうか姿を現してくだされ」
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