こうして張さん、千鳥足でどうにか家に帰っていった。もちろん、張さんが夜道を帰るときに、見えない何かが張さんを支え、無事にとなりの町にある屋敷まで送っていったのである。
こうして、このときから張さんは三日に一度は胡の四旦那を訪ねにいき、四旦那も時には張さんの屋敷にこっそりやってくる。もちろん、張さんは四旦那が家に来た時は、家のものには内緒にしてある。四旦那の姿は見えないが、四旦那はいろんなこと知っているし、酒もかなり強く、それに馬が合うというのか一緒に飲んでいると楽しくなるのでいつも大事な客としてもてなした。そして相手が姿を見せないのはそれだけの訳があるのだろうと悟っていたので、姿を見せてくれなどとはもう言わなかった。これには四旦那も安心してか、二人の仲はますます深くなっていく。
ある日、張さんは四旦那の屋敷できあることを思い出して四旦那に話し出した。
「四旦那、ご存知であろうが?南城に一人の怪しい巫女さんがいて、自分はキツネの神通力を借りてどんな病も治せるといい、これまで多くの人を騙し、かなりひどいことをやっとるが、貴公はどう思う?」
「ああ、あれか。あれはひどい。あれの家にはキツネなどはおらん」
「どうして知っておられるのかな?」
と張さんが聞いたとき、目には見えない誰かが側にきて張さんにささやく。
「張先生。いまおっしゃっていた怪しい巫女ですが、何者かはわからないので、わたしめが先生について様子をみにいきたいのですが?」
「うん?」
「ですから、このことをわたしめの主におっしゃってくだされまし」
これを聞いた張さん、これが四旦那の下男だと知り、さっそく四旦那にいう。
「どうでござる?貴公の下男が私と一緒に様子を見に行きたいともうしておるが・・」
「その必要はないでしょう」
「いや、やはり下男を連れ、これから様子を見に行きましょう」
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