先日18日は中国の伝統的祝日、春節で、つまり、旧暦のお正月です。中国人の感覚の中では、元日ではなく、春節が一年の始まりですから、この日は中国で最も大切にされる祝日です。
中国では、伝統的祝日に民族的なスポーツ活動を楽しむのが習慣です。例えば、春の祝日の一つ、祖先を祭る「清明節」の日には、お墓参りにちなんでのピクニックや、ブランコ遊び、凧揚げなど;夏の節句「端午節」には、龍の形をした船で川を下って競争するドラゴンボート、それから、敬老の日でもある秋の「重陽節」には山登り、などなどたくさんあります。その中で、最も重要視される旧暦のお正月「春節」の間は、各地方でいろんな面白いスポーツが行われています。
さて、その中からいくつかご紹介をします。まず一つ目は「花輪争い」というスポーツです。名前からだけでは、全く想像が付かないのかもしれませんが、これはを中国の南部で大変人気のあるスポーツで、特に、ドウ族、壮族、ヤウ族、苗族などの少数民族が好んでやります。
今年もこの「花輪争い」なんですが、プレイヤーはなんと100人までと大変な人数で行ないます。屈強な男性たち100人が二つのチームに分かれて競技に出ていました。まず審判が鉄製の筒の中から、七色の花輪を空中に飛ばします、男たちは花輪を競って奪い合い、ゲットした花輪を守りながらゴール区に向かいます。最終的に花輪をゴール区に運びこんだ側が勝ちとなります。つまり、花輪を相手陣営に持ち込んだら勝ちというわけです。
ラグビーやアメフトに似たスポーツですが、ただ出場人数は全く違います。最大で100人の男達がぶつかりながら、花輪を奪う非常に勇壮なスポーツで、500年の歴史があるそうです。民間スポーツに詳しい中国中央民族大学のイ・小康教授に伺いました。
「『花輪争い』は勇猛さを競う競技です。ラグビーに似ていることで、「東洋のラグビー」とも呼ばれています。春節に行なわれるこの大会は何とも盛大で、開会式には、民族衣装に身を固めた女性たちが集まり、非常に華やかなんですよ。」
この「花輪争い」はどちらかというと中国南部だけのスポーツというイメージが強いのですが、次は中国全土で行なわれるものです。それは「獅子舞」です。
これは日本にもありますし、中国の獅子舞とは少し異なりますが、イベントなどでごらんになったこともあるかと思います。ただ獅子舞はスポーツに入るのかと思う方はいらっしゃると思いますが、実は中国の獅子舞はハシゴに昇っていくなど、アクロバティックな動きもありますから、スポーツと言ってもいいと思います。
しかし、そもそもライオンがいない中国で、どうして人々はこんなに「獅子舞」が好きなのでしょうか。これについて、中国中央民族大学のイ・小康教授に聞きました。
「中国の獅子舞の始まりについては、このような言い伝えがあります。昔、中国の中原地区はよくひどい疫病が発生しました。しかし、病が発生するたびに、『年』という大きな動物が現れ、病を追い払ってくれたのです。そのため、人々は竹や布などで『年』の様子を真似して道具を作り、それが舞うことで厄払いをするようになったのです。今の獅子舞の面はその「年」です。まるでライオンのように見えますから、この舞は『獅子舞』と名づけられたそうです。」
この「年」というのは空想上の動物で、野菜が大好きということです。それを引き寄せるため、みんな家の前に新鮮な野菜を置いておきます。だから、獅子舞の中で最も難しい技、採用の採に青と書いて、「採青」というのがあるんですが、これは野菜を採取するという意味の技です。野菜を口にするため獅子を操る人たちが、9人で作ったハシゴに登るなど、アクロバティックな技を披露します。ですから、私達はこの獅子舞は単なる伝統舞踊ではなく、一種のスポーツとみなしているわけです。
続いては、「龍舞」です。こちらも中国に古くから伝わる芸能で、春節に豊作を祈願して舞います。全長25mの「龍」を9人がかりで持ち、「玉」1人、「太鼓、銅鑼」などの鳴り物が5人、合計15人で舞います。特に春節の間最もよく見られるスポーツです。
龍舞の歴史は2000年前に遡ることができます。最初は祖先を祭る時や、雨を祈る時などに行われるものでしたが、徐々に、祝日の民間芸能として盛んになってきました。およそ7世紀、唐の時代から龍舞はすでに祝日の定例行事として定着しました。イ・小康教授にも伺いました。
「一般的に、龍の体にたくさんの明かりをつけ、舞います。龍舞のチームは家の前に来ると、必ず家の主人に頭を下げ、祝福の気持ちを送ります。それから、しばらく上下左右に舞う演技を披露します。主人はそれに対して、必ず爆竹を鳴らし、礼を返さなければなりません。」
いま、獅子舞と龍舞は中国国内だけではなく、海外にいる中国人によってより広く伝えられています。中国の伝統的祝日や大切なイベントに、世界の多くの都市でよく獅子舞や龍舞が見られます。来年はオリンピックの年なので、多くの海外の方が中国を訪れると予想できます。通常のスポーツ競技のほか、大会の開閉幕式や、期間中のいろんなイベントなどで、中国の様々な民俗的スポーツが楽しまれると思います。(文章:王丹丹 02/26)
|