第15回アジア競技大会は閉幕しました。中国選手団は今大会で165個の金メダルを獲得しました。これは、前回のプサン大会より15個多い金メダル数となります。また7大会連続で金メダル1位となりました。でも、各種目にとって、この大会の意味はそれぞれ違います。
中国はこれまでのオリンピックで、常に体操においては、トップの成績を保ってきました。ところが、2004年のアテネオリンピックでは、男子団体で日本に破れ、金メダルを逃しました。
アテネ大会後の二年間、中国は新人の養成と技術の向上に力を入れてきました。その結果、今年の世界選手権で再び男子団体のトップを奪い返しました。今回のドーハ大会で、中国男子はまたしても日本といくつかの種目で激しい争いを繰り広げましたが、再び金メダルを獲得することができました。体操代表チームの黄玉斌総監督です。
「今回のアジア大会では、オリンピックの王者である日本を破ることができました。これが何よりもうれしいことです。このことで、2008年オリンピックに向けて、なくしかけていた自信を再び取り戻したと思います。」
また、中国のベテラン楊威選手は大会後、「今大会、最も大きな収穫は自信を持てたこと。これはオリンピックに向けて、プラスとなる」と感想を述べています。
さて、続いては中国得意の重量挙げです。女子重量挙げは中国の得意種目です。どの体重別のクラスにも、オリンピックレベルの選手が二人以上います。しかし、規定では、同一種目では、一つの国は選手一人しか出場することが出来ません。そんな中国の重量挙げにとって、今回のアジア大会は、特別の意味を持っています。女子重量挙げの李順柱チーフコーチです。
「今大会は、全て2008年のためといっても過言ではありません。各種目、選手1人しか出場できませんから、同じクラスに候補が複数いても、大舞台で持ち味を十分出せるかどうかが大きなポイントとなるわけです。ですから、今大会での成績は、出場者決定の大きな要素になります。」
だから、今大会、重量挙げの女子代表にとって、決して調製のための試合ではありませんでした。58キロ級の陳艶青選手は、一気に三つの世界記録を更新したほか、75キロ以上級でも、穆爽爽選手が、アテネオリンピックのチャンピオンを破って金メダルを獲得した上、スナッチの世界新記録を作りました。
他の種目でもそれがいえるわけですが、特に激烈な中国勢同士の競争がある重量挙げでは、ベテラン勢といえども決して手を抜けない2008に向けての大切な一歩というわけです。
続いてはフェンシングを取り上げてみましょう。フェンシングの中国代表も北京オリンピックでの有力な金メダル候補と言われています。ただ、1984年からの20年間、中国のフェンシング界は長い沈滞期を過ごしてきました。しかし、2004年のアテネで、中国は女子エペと男子サーブルの二種目で銀を獲得し、新たな黄金時代を迎える予感を感じさせたのです。フェンシング男子代表の肖剣コーチにお話を伺いました。
「アジア大会は我々にとって、トレーニングの重要な一環です。今大会、我々は若い選手たちを中心に代表メンバーを作ってきました。そして、オリンピックと同レベルに重視して、大会に臨みました。日ごろの練習から試合まで、若い選手たちに、オリンピックのつもりで戦えと求めていきたというわけです。」
今大会の中国勢は非常に若い選手が多いと・・フェンシングだけに限らず、若い選手たちにチャンスを与え、オリンピックと同じモチベーションで大会に臨む・・・そういう位置づけに今大会を置いた競技が多かったのです。
中国選手団のうち、60%以上400人あまりが、国際大会の経験がない新人選手です。彼らにとって見れば、今大会は国際舞台をじかに経験する大切な経験となったに違いありません。
ある競技は精神的な部分で自信をつける大会、ある競技では選手選考の要素となった大会、そしてある競技では若手にチャンスを与える大会と・・中国勢の金メダル165個といっても、様々な意味合いがあるわけです。
大会終了後、ドーハで行われた記者会見で、中国選手団の劉鵬団長は、次のように総括しました。
「アジア大会はオリンピックとは異なる大会です。種目そのものも異なりますし、出場資格、グループの分け方、点数の計算方法など、試合のルールが違います。また対戦する相手が違います。多くの種目で、アジアは決して世界の最高レベルではないのです。そして、競技場の雰囲気や選手たちが受けるプレッシャーも違います。確かに中国選手団はアジア一の成績を上げましたが、それをオリンピックと簡単につなげることはできません。今後1年半あまり、引き続き選手の強化に力を入れていきます。」
あくまでも今大会は一つのステップに過ぎないと・・まあ、それは当然だとは思いますが、ただ2008に向けて、非常に楽しみが増えた大会、期待が高まった大会ということはいえそうですね。(文章:王丹丹 12/18)
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