中国バレーボール協会はこのほど北京で、2006-2007シーズンの競技日程を発表しました。今シーズンは10月14日に開幕。来年4月8日までリーグ戦が展開されます。リーグは男子と女子の二つに分かれていて、各省が構成する16のチームが出場します。
その国内リーグで活躍する選手達が集まる中国代表チームですが、特に女子は優秀な成績を修めており、2003年には17年ぶりにワールドカップ、そして2004年アテネオリンピックを制しました。そういうこともあって、中国バレーリーグ、特に女子は世界トップレベルのリーグ戦とされているわけです。で、まずはこの歴史を振り返ってましょう。
中国バレーボールリーグは1996年に誕生したんですが、実はこの時期は実はバレーが最も低迷していたころでもありました。中国バレーの黄金時代は1980年代、郎平さんなど有名な選手たちが活躍していたときでした。1981年のワールドカップ、1982年の世界選手権、1984年のロサンゼルスオリンピックと次々と世界大会を制しました。
ところが、その直後から、一気に中国バレーの衰退が始まりました。チームを支えてきた選手が次々と引退していき、1990年代、中国の女子バレーは窮地に立たされました。国家代表の成績は振るわず、その結果、国内でのバレー人気も一気に凋落します。
当時から、すでに国内には、多くのバレーボールチームがあったのですが、その最高峰である全国選手権への観客数は急激に減り、多くのチームは存続の危機を迎えていました。
この難局を打開するため、中国バレーボール協会は1996年、新しい国内リーグを設立したというわけです。国家体育総局でバレーボールの強化を担当する李全強さんは、当時のことをこう振り返りました。
「中国バレーボール協会は当時、中国バレーのイメージを一新する必要性を感じていました。ファンの皆さんに試合会場へ足を運んでもらうためには、まず競技レベルそのものを高める必要があると認識し、まずは体制全体の改革からスタートさせたのです。」
この体制の改革というのは、つまり、ホームアンドアウェー式のリーグ戦を導入することです。新しいリーグ制は、一つの場所で集中的に試合を行う形を放棄し、ホームアンドアウェー式をリーグに導入しました。
これによって、各チームは地元に密着し、ファンにとっては『自分達のチーム』ということで愛着がわき、地元のメディアも試合を積極的に取り上げるというわけです。一シーズンの長さも以前より長くなって、試合数も多くなります。これによって、国内バレーの全体レベルの向上につながりました。
ただ、鳴り物入りで始まった中国バレーリーグですが、そうトントン拍子にことが運んだわけでもないです。
男女合わせて12チームでスタートしたバレーリーグも、当初は知名度不足で、観客も1年目が11万人。これは10年目のシーズンの5分の1ほどです。また発足当初は資金不足に悩みました。特に2年目のシーズンはスポンサーが一つもつかないという事態となり、やむをえず、中国バレー協会が全て資金を負担するという形で、リーグを存続させたのです。
よちよち歩きを始めた中国バレーボールリーグが、3年目のシーズンから、少しずつ上向いていくとなりました。
競技レベルの向上に伴い、スポンサーもバレーリーグに興味を示すようになりました。そのうち、中国国内でもよく知られる大手電子企業の「歩歩高」は、発足4年目の1999年から7年連続でバレーリーグを支援し、常連スポンサーとなっています。これについて体育総局のバレー担当、李全強さんは次のように述べました。
「電子企業の『歩歩高』が7年連続して、リーグを支援してくれたことが、バレーリーグの安定期を生みました。2005年シーズンからは、出場チームの12チームから16チームに拡大しました。そのため、昨シーズンは、さらに試合が面白くなり、多くのファンが会場を訪れてくれるようになったのです。」
そこからいくと、大手企業が次々と資金面のサポートを行なっている現状は、非常に恵まれているといえます。
バレーボール協会によると、今シーズンは、スポンサーが計8社つき、史上最多となるということです。その中には、バレーボール用品の大手メーカーのMIKASAや、スポーツ設備メーカーのGERFLOR(ジェーフロー)など、世界的企業が並んでいます。
国内リーグが成長してくれば、それにともなって、国の代表チームも伸びてくると・・特に資金的に余裕が出てくると、下部組織が充実してきますから・・若い選手が次々と出てきて、その頂点にある代表チームも充実してくるという、いわゆるいい回転がうまれるわけです。
特に女子リーグは、新人の成長が最も目立つ舞台となり、国家代表に優れた人材を送り続けています。体育総局の李全強氏です。
「シドニーオリンピックの翌年の2001年、女子バレーの中国代表は一気に若返りを図りました。馮坤や、楊昊、周蘇紅、劉亜男、王麗娜などの主力メンバーは、いずれも、この時、国内リーグで頭角を現した新人で、最年長の馮坤と王麗娜でも、まだ22歳でした。この若手主体の国家代表がその年の世界チャンピオンズカップでいきなり優勝して、世界を驚かせたのです。」
この勝利を皮切りに、新世代の中国代表は一気に世界のトップに躍り出ました。2003年、日本で開かれたワールドカップで優勝し、17年ぶりに世界を制覇、そして翌年の2004年、アテネオリンピックでは、期待通り、金メダルを勝ち取りました。
代表チームが強ければ、国内の関心もぐんぐん高まると・・バレーボールも例外ではありません。中国国内でも再びバレーブームが起き、そのおかげで、国内リーグの人気にも火がつきました。
今シーズンは、中国最大のテレビ局、中国中央テレビが週に三回ほど、生中継することになったのです。これだけのメディアの注目を浴びて、シーズンをスタートさせるのは今までなかったことです。中国中央テレビスポーツ報道センターの江和平主任はこう語ります。
「中国のバレーボールリーグは世界でレベルが最も高く、国際的影響も最も大きいリーグとされています。香港やマカオのメディアからも、このリーグを中継したいとの申し出を受けました。またリーグのマーケットとしての価値も上がっています。スポンサーが確保できただけでなく、その数が増え続けています。今、中国国内には、多くのスポーツリーグがありますが、バレーボールはその中でも最も優等生ということができるでしょう。だからこそ、積極的に中継する価値があると判断わけです。」
ただ・・水を差すようなんですが、以前もそうであったように選手というのはいずれは引退しますから、この盛り上がりを一過性のブームに終わらせないためには、やっぱり次世代の選手をいかに育てるかですから、そのためには競技の裾野を広げる・・つまりファンの皆さんを増やして、多くの人たちにバレーに親しんでもらう、そして優秀な若者にバレーをやるよう選んでもらうようにもっていく・・まあ絶頂期の今だからこそ、やらなければならないことはたくさんあるというわけです。
このバレーリーグの質をより高めるために、今シーズンはメディアを通してスター選手たちをアピールするなど、選手の『商品価値』を上げる努力も行なわれます。今シーズン終了後、中国では、何人かのバレー選手がバスケットのヤオミンのようなスター選手になっているかもしれません。
スターを作るというのは、そのスポーツに関心を寄せてもらう上で、絶対に必要なことですからね。中国バレーリーグ、今月14日から始まります。皆さんも何かの折に、少し中国のバレーはどうなっているかななんて情報集めをしてみていただければと思います。(文章:王丹丹 10/03)
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