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「再生の大地」北京公演③~赦しの花に託された思い

2015-09-06 18:35:20     cri    

 「凍てつく大地に咲く花は 哀しみ 憎しみ超えて咲く
  大地に生きる人間として、武器より花を贈りましょう
  伝えてください、祈りをこめて、赦しを露に、撫順の朝顔…」

 これは、エンディングを飾る12曲目、「撫順の朝顔 めざめの花 ―前事不忘 後事之師―」の歌い出しです。

 中国語発音による「前事不忘 後事之師」(前のことを忘れず後の戒めとする)がこの後、リフレインされます。

 朝顔は組曲「再生の大地」の中では、「赦しの花」とされ、特別な意味があります。作詞した大門さんは、組曲の中でこの歌が真っ先に完成した曲だと紹介しました。そして、「撫順の朝顔」に着目したのは、佐賀にお住まいの元戦犯・(故)副島進さんの実話を聞いたからだといいます。釈放され管理所を出る時、職員から「今度来る時は武器ではなく、花を持ってきてください」と、管理所で咲いていた朝顔の種を渡されました。副島さんは帰国後、その種を撒き、花を咲かせては種を近所に配って、撫順戦犯管理所での出来事を伝えてきたそうです。


8月30日 撫順戦犯管理所陳列館敷地内に咲く朝顔


撫順戦犯管理所陳列館を訪れる団員


敷地内の朝顔の前で記念撮影をする団員(写真提供:佐藤忍さん)

 大門さんは、新中国の人道主義に基づいた寛大な政策こそ奇跡を生み出すことを可能にしたと言い、「罪を犯した日本兵を許してくれた中国の人たちと、自分たちの罪の赦しを求めた日本人が撫順戦犯管理所で出会い、"撫順の奇跡"を作った。まずは、中国人職員が自らの考えを変えたことから始まった」と、この題材に感動した当初のことを振り返りました。

 組曲には、1歳のわが子が日本軍に殺されたという辛い思い出があるにもかかわらず、戦犯の世話を命じられた看護士の役柄が描かれています。演じた今井治江さんは、定年まで東京都内の国立病院で看護士をしていました。子どもの時に身近に見聞きした朝鮮人や中国人への差別、侵略戦争における日本の加害者として責任に対する強い反省を込めて、10年余り前から「再生の大地合唱団」と同じ反戦平和を訴える「紫金草合唱団」のメンバーとして歌い始めました。

 「歌うことによって、心がすっとなった」

 今井さんは合唱を続けてきた原動力を目を輝かせてふり返りました。ところで、「紫金草物語」では戦場に狩り出されたわが子の帰りを待ち続ける日本人母親のソロの担当でしたが、「今回は立場を変えて、子どもが殺された側の母親を演じるので、うまく伝えられるかどうか、まだ模索中です」と、公演前に控え目に話してくれました。しかし、いざ本番になると、心裂けそうな母親のもがきを実に良く表現し、観客たちの心を揺さぶりました。


戦犯管理所看護士の朗読とソロを担当する今井治江さん

 ところで、平均年齢が約70歳の団員に比べて、作曲を手がけた安藤由布樹さんはまだ53歳の若さ。東京で生まれ育った安藤さんは小学校の時、被爆者の両親を持つ同級生が白血病で亡くなるのを見て、「平和が何よりも大切、命が何よりも大切」であることを強く感じたと言います。

 「侵略や殖民地支配をしていた国々に謝罪する気持ちは日本人の誠意として持たなければならない。戦争の残した問題の解決には、加害者と被害者が一緒になって、お互いが公平な立場で考えていくことが大切だと思います。作曲家として、平和の大事さを音楽で受け継いで、伝えていくことが自分が果たすべき役割です」

 平和のバトンが日本で、確実に受け継がれていることが確認できた清々しい言葉でもありました。


CRI日本語部のインタビューに答える作曲の安藤由布樹さん

 つづくその1 その2 その4

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