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水墨画の交流を通して 日中両国のギャップを埋めたい!!
   2008-04-28 20:56:54    cri

 水墨画は古くから日中両国で親しまれてきた芸術だ。しかし、水墨画に対する認識や画風は大きく異なるという。水墨画家の沈和年氏は、日中両国の画風を取り入れた作風で人気を博しているという。その画風の魅力は一体どこにあるのだろうか。さっそく、沈氏の日本での活躍ぶりを見てみたい。

 沈 和年 55年上海生まれ。75年上海大学美術学院卒業。90年留学のために来日。洋画家・荻太郎氏に学ぶ。中国水墨画の伝統の上に、現代的で斬新な感覚を盛り込んだ画風は画壇で注目されている。 現在、上海市美術家協会会員、日本翠風会代表、国際水墨芸術促進会運営委員、日中文武国際芸術研究学会副会長。作品集に『沈和年画集』(上海書画出版社)、『沈和年作品集 1、2』『墨絵をたのしむ』『ステキなはがき絵』(二玄社)などがある

 取材は張国清北京放送東京支局長である。この取材内容は日本東方通信社の週間雑誌「コロンブス」2008年3月号に掲載されている。  

出版物を通して 水墨画の魅力を伝える

 張国清:沈さんは中国にいたときから、水墨画の才能を発揮していたそうですね。

 沈和年:上海大学美術学院では、絵のおかげで卒業できました。初来日は87年で、日本での展覧会に出展するためでした。その頃は日本語を話せなかったので、通訳を探すだけでも大変でした。

 張:その後、留学するためにふたたび来日したのですか。

 沈:そうです。そのときは覚悟を決めていたので、日本語学校に通うことにしました。その後、美術をさらに勉強するために、和光大学に研究生として入学したのです。そこでわかったことは、私の水墨画と日本の水墨画はかなり違うということでした。ですが、それがハンディになるということはありませんでした。水墨画のルーツを中国で学んできたという自負があったからです。が、今思えば、うぬぼれに似た自負だったかもしれません。だから、当時の私は日本の水墨画に抵抗を感じていたかもしれません。

 張:来日してどのようなことに驚きましたか。

 沈:何よりも日本と中国の生活レベルの差に驚きました。日本人の真面目さも印象的で、本当に素晴らしい国だなァと感じました。ところで、私は家族と一緒に日本に留学してきたのですが、当時小学校1年生だった子どもは日本語の上達が早く、中国語を忘れつつありました。そこでその2年後、子どものために中国へ帰国することにしたのです。子どもの日本語が上達すればするほど「中国を忘れるのではないか」という妙な不安にかられたからです。その後、子どもは中国の高校を卒業し、今は一橋大学に通っています。おかげで、日本語と中国語のどちらも流暢に話せるようになりました。

 張:ところで、沈さんはふたたび来日していますが、どのような理由があったのですか。

 沈:日本の出版社に声をかけられて、来日することになりました。そして「中国と日本の考え方の違いに注目しながら、交流を進めることが大切だ」と思い、98年から『墨』という雑誌に連載しはじめたのです。そのなかで、私は水墨画に対する考えや筆遣いについて書きました。その連載を終わって間もなく、ある編集者から珍しく「初心者向けの水墨画技法書を執筆してほしい」という話をいただきました。それが00年に出版した『墨絵をたのしむ』でした。03年には出版記念展示会も開催しました。また『ステキなはがき絵』というシリーズも出しました。

 張:現在も雑誌への連載はつづけているのですか。

 沈:04年には『人民中国』という雑誌に水墨画の連載講座を執筆し、今は『趣味の水墨画』という雑誌によく連載したり、技法特集やNHKの水墨画テキストなどを書いたりしています。また、中国の雑誌にも日本の美術について書いています。同じ墨を使っていても、日本と中国の水墨画はかなり異なります。ですから、とにかく中国の水墨画の基本認識を日本の方々に伝え、日本の美意識を中国の人たちにも知ってもらおうとしたのです。 日中の文化の違いを 認識することが重要だ。

 張:ところで、日本と中国の水墨画はどういったところが異なるのですか。

 沈:見た目は中国の水墨画のほうが全体的に硬い印象があります。というのは、中国の絵は線が主体で、骨格を強調する傾向があるからです。そのため、筆の線がシッカリしていて、強い印象を与えるのです。それに比べて日本の絵は柔軟なタッチを持っています。たとえば、横山大観の絵はボカシの技法を用いて、やわらかいフン囲気をつくり、自身の美意識を表しています。どちらがいいというわけでもなく、それぞれが素晴らしい個性だと思っています。  ちなみに、私が日本画のボカシの手法を取り入れはじめたのは日本に来てからです。また、筆で絵を描くと同時に、指で絵を描いたりもしました。しかし、水墨画にはさまざまな手法があり、それぞれの良さもあります。たんなる技法ではなく、どのような境地をつくり出すのかが大切なのではないでしょうか。そこで、私は墨の濃淡で「幽玄の美」を表現ができればという思いで『恍惚シリーズ』を描きました。

 張:日本人のなかには「中国の絵はきつい印象がある」という人もいますね。 沈:言葉に関してもきついといわれますね。ですが、それはたんに文化の違いだと思います。現に、日本人はやんわりとした表現を使います。たとえば「検討する」という言葉は日本では断り文句として使います。が、中国人ではそのような使い方はしません。それに、日本人は対人関係において「自分、自分」と主張しません。一方、中国人はどちらかというと自己主張が強い傾向があります。私たちはこうした違いを知りながら、その距離を縮めていくべきだと思います。だからこそ、私は日本の感性を取り入れながら、中国の良さを広めるようにしているのです。

 張:やはり水墨画は東洋の文化なのですか。

 沈:その通りです。ですから、欧米の人たちが初めて水墨画を見ると、その美しさにビックリすると思います。西洋の世界感と大きく異なりますからね。西洋画の基本は写生です。一方、水墨画は物を観察しながらも、かならず写生しなければならないということではありません。物の形にとらわれず、いかに物の本質を表すかが水墨画の描き方なのです。また、余白の奥深さとおもしろさも西洋美術にはない発想です。このあたりのギャップのおかげで、水墨画は欧米でも多くの人たちを魅了しています。

 張:今年は北京オリンピックが開催されますが、そのために何か特別な企画などを用意していますか。

 沈:今のところ考えていませんが、何かで表現するとすれば、やっぱり水墨画しかありません。これからも地道に日本の人たちに、水墨画の良さを広めていきたいと考えています。たとえば、このオリンピックを機会に、日中の水墨画を比較できるような展示会をするのもいいと思います。日中の違いを考えるとき、絵というのはひとつの切り口になると思います。積極的にシンポジウムを開催したりして、どこがどう違うかということを見極めていく必要があると思います。

 張:これからも素晴らしい水墨画を描きつづけてください。本日はありがとうございました。

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