|
|
|
『下周村』のポスター1 |
『下周村』のポスター2 |
劇場外側のポスター |
4月上旬、北京市内の中国児童芸術劇院で、中国人と日本人が共演する舞台劇が上演されました。
この作品は『下周村』というタイトルで、中国の新進気鋭の舞台演出家・李六乙さんと、日本でおなじみ・平田オリザさんがタッグを組んだ作品です。また、中国と日本の役者が共演し、それぞれ中国語と日本語で演じます。中国演劇界でも、2つの異なる言語で演じる例は、今回が初めてということです。
作品の舞台は、中国・四川省の農村「下周村」。この村に日本企業が進出し、工場が建設されるところから物語が始まります。その建設現場で、ある日、古代遺跡が発見されました。このニュースを聞いて、日本から、中国から、いろんな人が村に集まってきます。考古学者、骨董品ビジネスを行っている商人、警察、地元の人々などなど。人々は村の茶館に集まり、意見をたたかわせます。遺跡を発掘すべきか。それとも、工場を建設すべきか。みんなの意見はまとまりません。さあ、どうなる?という物語です。
このユニークな舞台に、観客もさまざまな感想を持ったようです。
女子大学生:
「演劇を見るのは初めてだったんです。少し難しい話で、しかも日本語のシーンもあると聞き、理解できるか不安でしたが、パンフレットでストーリーを予習してから見たので、問題ありませんでした。意外な企画で、よかったです」
男性:
「このような舞台劇は初めて見ましたね、新鮮ですね。内容が深くて、普通の新劇とは一味違うものに仕上がっていたといろいろ考えながら見ていました」
なお、舞台の両脇に電光掲示板が設置されており、日本人の役者がしゃべる場面では中国語字幕が流れていましたので、日本語のわからない観客も大丈夫でした。
シナリオの原案は2005年にはできていたそうですが、2人の演出家は中国と日本、違う場所に住んでいますので、メールでやりとりしながら、ストーリーを作っていったそうです。その後、平田さんは北京に通い、登場人物1人1人についてイメージを打ち合わせながら、シナリオを何度も書きなおしていったそうです。そして、実際の稽古が北京で始まりましたが、練習期間は2ヶ月しかなかったそうです。しかし、通訳を介しながら、お互いコミュニケーションをとっていったということです。
ところで、中国人と日本人が一緒に舞台を作る中で、作り手にもさまざまな発見があったようです。
役者・粟田麗さん(日本人の娘役):
「中国の観客は、面白いところは正直に手をたたいて笑うし、つまらないと感じている方は外に出て行っちゃいます。日本にはない文化に驚きました。中国の方は、態度がすごくはっきりしているなと感じていました」
|
|
|
李六乙監督(右)と筆者 |
日本人役者粟田麗(左)さんと筆者 |
中国人役者果静林さん(右)と筆者 |
役者・果静林さん(骨董品ビジネスの商人役):
「違う国の役者と1つの物語を作り上げるというのが面白いなと思って参加したんですけど、とにかくいろいろな発見がありましたね。たとえば、日本の役者のみなさんは、仕事に対して、非常にまじめなんですよね。遅刻したり、早く帰ったりすることもないし、毎日必ず、稽古のはじまる30分前には来ている。こういう日本人の勤勉さを目の当たりにしただけでも、興味深い経験でした」
北京公演は終わってしまいましたが、もうすぐ東京公演が始まります。5月15日から20日まで。会場は、東京・新国立劇場です。
最後に、東京公演に寄せて、演出をつとめた李六乙監督からメッセージをいただきました。
「言葉の違いは大した問題ではありません。舞台とは、言葉が分からなくても理解できるもの、何かが感じられるものだと、私は思っています。中国人の役者がどんなパフォーマンスを見せるのか、どうか楽しみにしてください。きっとおもしろいと思っていただけると信じています」
|