3月26日、北京大学で中国人を対象にした落語会が行われました。今回の落語会ですが、出演は桂小米朝さんです。小米朝さんの20年来の友人である京都外国語大学の彭飛(ぽん・ふえい)教授が、「中国人学生が日本文化をより理解するための機会を提供したい」ということで小米朝さんに協力を要請し、今回の企画が実現することになったそうです。
小米朝さんが落語会の冒頭で中国語で挨拶すると、来場者達は大きな拍手で応えました。北京大学日本語学部の学生を中心に、日本語を学んでいる大学生200人あまりが詰めかけ、会場となった北京大学の講義室はビッシリと埋まっていました。舞台には、ちゃんと高座(こうざ)が組まれていました。机とレンガを組み合わせて作った即席の高座でしたが、日本の寄席の雰囲気が出ていたと思います。
小米朝さんはユーモアたっぷりのトークで、中国人学生達の心を一気につかんで行きます。そして演目が始まりました。小米朝さんが選んだのは、動きやしぐさが多く、分かりやすい「動物園」というお話でした。
日給1万円という好条件の仕事にとびついた男。しかし、その仕事とは、虎の皮を着て、「移動動物園」で虎を演じるというもの。はじめのうちは虎になりきり、来園客を脅してみたりするも、腹が減っても普通に飯を食べるわけにも行かない。なかなか大変だと思っていたそのとき、園内アナウンスが。なんと、「虎とライオンの猛獣ショー」が行われるという。男の運命や、いかに?
「落語は初めて見る」という学生が多かったのですが、小米朝さんのクルクルと変わる表情やテンポの良い語り口に、すっかり魅せられていたようでした。落語会のあと、来場者に感想を聞きました。
北京大学3年生の女子学生は、「おもしろかったです。落語は、日本語を勉強し始めた頃に一度聞いたことがありますが、そのときにはあまり理解できませんでした。でも、今は日本語のレベルも上がったので、問題なく楽しめましたよ。今日はいろんなものを学びました。また聞きたいですね」と話してくれました。また、1年生の男子学生は、
「素晴らしい!そのひとことです。落語は初めて聞きましたが、おもしろかったです。中国にも伝統芸能は多くて、漫才のようなものもありますが、趣が全然違いますね」と興奮気味に語りました。
小米朝さんは、中国に来るのも初めてなら、中国で落語をやるのも初めて。中国人に落語が受け入れてもらえるのか、予想もつかなかったようです。しかも、小米朝さんは上方落語(関西弁)ですから、この関西弁のニュアンスが伝わるのか?と心配されていたようです。しかし、学生たちの反応を見て、感動を隠せない様子でした。
落語会が終わってから、小米朝さんにもお話を伺うことができました。
「これだけ受けるとは思わなかったですね。本当にうれしいですよ。(学生たちが落語を理解していたことについて)中国の方って日本語の上達が早いんですね!信じられないくらい。ますます日本語を勉強して、逆に、我々に日本語の面白さを教えてほしいです。そうしたら、日本人の中にも、中国語を勉強しようという人が増えると思います」
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