中国のパンクバンド「BRAIN FAILURE」のマネージャー
今年の2月、北京の古い町並みを残す鼓楼地区。赤い提灯のぶら下がる古風な四合院と軒を並べて、真っ黒な壁のライブハウスが出現した。門を押して中に入ったとたん、場内にみなぎるパンクロックの洪水に鼓膜が激しく打たれた。ギターを手に汗だくで熱演するアーティストを前に、観客の若者たちは興奮状態。中にはモヒカン頭の少年たちの姿も。この日から、正式オープンしたライブハウス「M.A.O」のライブ現場だった。ニューヨークからのパンクバンド・SOLEAに続き、メインを務めたのは中国のパンクバンド「BRAIN FAILURE」だった。
BRAINFAILUREのマネージメントは日本のインディーズレーベル「バッドニュース」が行っている。そのバッドニュースの北京駐在社員で、「BRAINFAILURE」のマネージメントを担当しているのが奥野さんだ。
BRAIN FAILUREは米国でも公演実績のある中国でトップクラスのパンクバンド。4月には日本での公演も決まったという。
「中国で独自レーベルを立ち上げ、パンクバンドに限らず、BRAINFAILUREに続く潜在力のあるバンドを発掘していきたい」。新たな登竜門を目指す若手ミュージシャンも今後増えていくことだろう。
奥野さんが中国ロックと知り合ったのは、98年から北京に語学留学に来たのがきっかけだ。留学先の大学近くにある五道口のライブハウスで中国ロックのエネルギーに触れ、帰国後、父親の事業を手伝い渋谷に中国料理店を開店。2001年再び上海へ渡り、日系メーカーでの仕事を経て、昨年初め、BRAIN FAILUREの前マネージャー(日本人)からこの仕事を紹介された。
崔健の登場以来、20年の歴史を持つ中国ロック。かつては若者たちが発するメッセージ性の強い音楽として、社会現象ともなり、海外のメディアにも注目されたが、その後は流行歌曲(ポップス)に押され、市場もファンも伸び悩んでいるといわれる。
しかし、08年の北京五輪を目前に控え、大きな変化が現れたという。「これまでは認められなかった数万人規模の大規模なロックフェスティバルが北京でもできるようになった。sina.com(新浪網)など大手ポータルサイトにも中国ロックを紹介するコーナーができた」。
次の目標はテレビやラジオなどのメディアでロックの知名度を高めることだという。「知名度が高まれば、優秀なミュージシャンがロックに集まるようになる」。ユーザー数が4億5500万を突破した中国の携帯電話向けの音楽配信なども大きな市場だ。
奥野さんに限らず、中国ロックにひかれる日本人の若者が増えている。ミュージシャン、バンドのマネージメントのほか、中国ロック最大のデータベースも日本人の作成で、中国人ミュージシャンやジャーナリストからも参考にされているという。ロックを通じて日本と中国の若者の交流が広がることを期待したい。(文責:古畑康雄・王小燕)
写真:パンクバンド「BRAIN FAILURE(脳濁)」メンバーと奥野さん(帽子を被っている男性)。共同通信社提供
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