留学生・加藤嘉一さん
北京大学国際関係学部1年生、北京大学日本人会会長、
文部科学省国費留学生
21歳。184センチの長身。色白で、整った顔立ち。立て板に水で中国語をあやつる。話の内容たるや、日本、中国、アメリカ、東アジア、全世界…。スケールが無限に広がっていく。
北京大学に初めてきたのは2003年3月であった。北京に来るにあたり、彼は人生の大きな決断をした。かねてから考えていた日本の大学への進学を辞退し、中国へ向かう決意をしたのだ。そして、2004年4月には文部科学省の国費留学生試験に合格、現在は国費留学生として日々努力している。「子供の時から歴史が好き」、「3人兄弟の長男なので、両親にかかる負担が軽くなる」、「将来は外交官になり、国連で働きたい。そのため、中国理解は避けては通れない」、などが多くの人間の反対を押し切ってまで中国留学を選択した理由だった。
SARS終息後、北京に戻り、最初の一年はもっぱら語学の学習。05年春現在、HSKはすでに8級に合格。普通に中国語で議論していても、まったく外国人と感じさせない。しかも、中国人の中国語を耳にすれば、その人の出身地が南か北かを瞬時に判別できる。優れた語学センスの持ち主である。
語学学習のコツは「人と接すること」。キャンパス内の中国人の先生や、学生、売店の店員との交流だけでなく、企業、学会、マスメディアなどに幅広くアンテナを張りめぐらしている。寝る時間を惜しむように人との接触を心がけ、生活交流を踏まえた上での議論を交わすことで、中国を理解し、国際情勢を考え、日本の置かれている位置を分析・考察しようとしている。中国人の同級生と夜明けまで、議論を続ける日もよくあることだという。
しかし、どんなに忙しくても、欠かさず継続していることがある。
走ることだ。
「価値観、人生観が走ることから形成され、走ることは僕の原点」と、毎日1時間ほどかけて、キャンパス周辺15キロあまりを走っている。
学内では、総数200人余りいる北京大学日本人留学生のまとめ役。メーリングリストで情報を発信したり、昨秋開催された初の市民レベル中日会話交流大会に協力したりしていた。また、人民大学付属高校では高校生向けの日本語授業を担当し、精力的に活動している。
「日中の友好は両国にとって利益になることだし、世界の発展にも繋がっている。中国はこれから強くなり、大きな国になる。その台頭は世界の安定と平和にとって、良いことであると信じている。日本はこの点を十分意識して外交を進めるべきだ。日本は中国とアメリカの間にいる国として、架け橋を担うという独自な役割を果たすことができる」。流暢な中国語で熱く語る彼。
夢は「国連で働き、自分の見解を訴え、社会で影響力を持ち続ける」こと。そのために、「先ず、様々な経験を積み、北京大学で四年間の勉強を終えたら、アメリカでマスター課程に入る」という。中国留学を機に、のびのびと「世界遊泳」を楽しんでいる意欲的な姿が目の前にあった。
また、四年の大学生活が終了した時点で、「国内にいる日本人向けに」、本を書き上げたいという。仮タイトルを既に『加藤嘉一の四年日記』と決めているところが彼らしい。
別れ際、記念撮影を求めたところ、一回目の写真が「顔に微笑みがない」と気に入らず、再度の撮影を要求。にっこり撮れたらやっと満足してくれた。Vサインにも積極的に応じ、くったくのない、無邪気ささえ残す普通の青年でもあった。(王小燕)
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