05年11月、中国文化部主催で「日中韓文化コンテンツフォーラム」が開催された。場所は三国志の舞台でもある成都。このゲーム、アニメ、音楽などのコンテンツ分野で3カ国交流を促進するフォーラムに参加された朱さんは日中間の音楽ビジネスを牽引する一人である。
JASRACという音楽著作団体をご存知でしょうか?朱さんが日本と関わりをもったきっかけは日本のJASRACでの研修である。古典芸能まで幅広く扱った政府の文化関係の仕事をしていた朱さんは90年に1年間の来日が実現し、そこで本格的に著作権について勉強することができたそうだ。
今、朱さんが所長をしている日本音楽情報センター(中国名:日本音楽信息中心)は、北京にいながら日本の最新の音楽CD、DVDを視聴できる。99年5月に中国の民間会社と日本の(財)音楽産業・文化振興財団(PROMIC)と(社)私的録音補償金協会(SARAH)という音楽関連の団体の協力により設立された。当初は3人スタッフ、200枚の音楽CDから始まったセンターも、今ではCD・DVDが5000枚を超えるようになった。毎月、日本から新しいCDが届けられており、まるでタワーレコードの視聴コーナーがそのまま北京にあるような施設である。お金のない中国人学生も楽しめるし、日本に旅行にいき音楽CDをまとめ買いをしたい中国人も、事前にここで決めておけば大切な滞在時間を効率的に使えるであろう。
(全国から寄せられた『音楽新幹線』へのファンレター)
こうした施設のほかに、朱さんは中国での音楽事業の企画、運営も推進している。04年には上海ROJAMで「日本FANS大集合」というイベントを、国際交流基金やJALなどの政府団体・企業を巻き込んで展開。日本、中国で活躍する多くの若手アーティストも出演、彼らにとってもこのようなイベントで公演する場を提供されることは何よりも嬉しいはずだ。また、朱さんが最近、力をいれて取り組んでいる企画に日本の最新の音楽を紹介するFM放送番組の立ち上げがある。「音楽新幹線」というタイトルで06年から中国全土30局以上でのオンエアを予定しているその音楽番組は、発展している大都市沿岸部だけではなく内陸の中都市に届けることも予定されている。第1回目の放送デモテープを聞かせて頂いたが、映画の「NANA」から「電車男」まで、最近の日本のカルチャー情報が軽快な音楽とともに視聴者に届く内容になっている。
「日本のコンテンツは強い、だから自然に普及していくのでは?」という発想は一部の裕福な中国人には届くかもしれないが、中国全土にはなかなか届かないであろう。「日本のコンテンツって強いよね」と日本人として誇れることができるその背後には、朱さんのような日本の音楽を幅広く中国人に届けてくれる存在があることに感謝したい。(森岡正樹)
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