横浜中華街の発展には日中関係の正常化が不可欠だ!!
横浜中華街は世界の中華街のなかでも最大規模を誇っている。とはいえ、時代の変化とともに、住民や客層の意識は変化し、全体的な売上げは減少傾向にある。はたして、現在の横浜中華街はどのような状況にあるのか、そしてこれからどのような方向に向かっていくのだろうか。横浜中華街で60年もの歴史を持つ大珍樓の陸佐光社長に聞いてみた。
取材は、張国清・北京放送東京支局長。取材内容は日本東方通信社の編纂による週間雑誌「コロンブス」2006年10月号に掲載されている。
激化する価格競争 これからは個性が大事
張:大珍樓は横浜中華街で60年という長い歴史を持つ老舗料理店です。陸さんは大珍樓の2代目の経営者ですが、店を継ぐにいたった経緯からお聞かせください。
陸:私の両親は広東省の生まれで、戦後の横浜中華街で広東料理店を出したそうです。ですから、私は横浜生まれの横浜育ちで、華僑2世ということになります。
もちろん、子どもの頃から店を継ぐつもりでしたから、高校を卒業すると、すぐにホテルオークラで修行することになりました。当時、日本のホテルでは中華といえば四川料理が主流だったのですが、ホテルオークラは広東料理だったのです。
その後、4年間の修行を終えて、24歳のときに大珍樓に戻り、社長になりました。当時から「新しいことをしたい」という思いがあったので、さっそく料理を刷新するとともに、店舗を大幅に改装することにしました。そして、店をビルにして、中華街で初めてエレベータを設置しました。
張:中華街とともに歩んできた大珍樓ですが、どのような特色があるのでしょうか。
陸:中華料理には広東料理、四川料理、山東料理、上海料理などがありますが、大珍樓では伝統的な広東料理を出しています。とりわけ焼き豚や魚介類を使った料理には自信があります。また、香港から招いた料理人による飲茶も出しています。小皿でいろんな味を楽しめる飲茶は女性を中心に人気を集めています。
張:ところで、中華街は世界のいたるところにありますが、そのなかでも横浜中華街の特徴はどういったところなのでしょうか。
陸:たしかに中華街は世界各国にあります。日本にも横浜市、神戸市、長崎市に三大中華街があります。しかし、なかでも横浜中華街は最大規模を誇っており、360店もの中華料理店が軒を連ねています。文字通り一大観光地になっています。それだけではありません、そこには中国の生活や習慣といったものがあるのです。それが魅力のひとつになっていると思います。
張:バブル以降、日本の景気は急激に変化してきましたが、大珍樓の景気はいかがですか。
陸:やはり徐々に活気がなくなっているように思います。現に、客単価がピークを迎えたのは私が社長になって3年目のときで5800円でした。今では3500円前後といったところです。
この原因は横浜中華街全体のブランドが低下していることにあると思います。というのも、最近は中華街にある料理店がつぎつぎと単価を下げているからです。かつての横浜中華街には、料理にも店にも高級感がありました。中華街でしか食べられない本格中華をウリにしていたからです。
張:では、どうして価格競争が激しくなってしまったのでしょうか。
陸:最近、中華街にも新華僑が経営する店が増えはじめてきました。おそらく全体の30?前後が新華僑の店になっていると思います。旧華僑に比べて、新華僑はビジネスに対して積極的ですので、時流を見極めると、つぎつぎに料理の値下げをはじめたのです。しかも、最近は中華街のアチコチで食べ放題がはじまり、ますます価格競争に拍車がかかってきました。もちろん、できるだけ安い価格でおいしい料理を味わってもらうことは大切ですが、あまりにも安易に価格競争に走ると、どうしても品質を落として価格を下げる店が増えてくる。と同時に、安ければいいというお客も増えてくる。そうなると中華街全体のブランドが低下してしまうわけです。とはいうものの、あまりにも価格競争が激しくなったため、大珍樓でも2年前から食べ放題をはじめることにしたのです。2000円のバイキングですが、イッ気に若い人たちが来るようになりました。
張:とはいえ、そのような価格競争がつづいてしまうと、キリがありませんね。
陸:その通りです。そこで、私も方向転換することを決意したのです。というのは、旧華僑までもが食べ放題などで低価格競争に走ってしまうと、ますます横浜中華街のブランドが低下してしまうからです。ですから、これまでの食べ放題は、当店の60周年記念イベントということにして、これからは高級志向を目指していこうと思います。考えているのは宮廷料理です。満漢全席なんていうことも考えています。また、ビルも改装して心機一転をはかります。現在、大珍樓の5階は和室になっているのですが、そこを洋間にしてVIP専用の部屋にしたいと思っています。
住民の固い結束がこれからの課題に
張:ところで、昨年、みなとみらい線が開通して都心から横浜中華街へのアクセスは向上しました。横浜中華街への経済効果はいかがでしたか。
陸:開通してから3カ月間はビックリするほどお客さんが増えました。ですが、そのあとは以前とほとんど変わらない状況になりました。テレビなどで取り上げられるときと同じです。そういえば、日本のお客さんは日中関係の動向にも左右されます。実際に昨年、中国で反日デモが起こったときには、お客さんが急激に減少したんです。
張:観光客の増加を目指して、横浜市とのコラボレーションなんていうことはありますか。
陸:数年前に横浜市と組んで料理教室をしたことがあります。そのときは横浜市の呼びかけで、50~60人もの参加者が集まりました。そこで、私は中華街の調理人に声をかけて、講師になってもらったのです。本場の中華料理を学べるということで、多くの参加者から喜びの声をいただきました。いつかまた開催してみたいと考えています。
張:ところで、横浜中華街での華僑同士の結束力については、いかがでしょうか。
陸:もちろん、旧華僑と新華僑、中国派と台湾派のような派閥があるのは事実です。ですが、私たちの子どもの世代を見ていると、そういった派閥に関係なく、遊んだりしているようです。これは非常に喜ばしいことだと思います。だからこそ、そんな子どもたちに中華街に対する愛情や思い入れを伝えていきたいと思います。そうすれば、中華街は住民が一丸となることで、ますます発展していくはずです。
張:横浜中華街が華僑の拠点として、日本の観光地として発展していくことを期待しています。本日はありがとうございました。
問い合わせ先
大珍樓
〒231-0023
横浜市中区山下町202番地
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