日中のニカ国語で現代文学を編集する「藍・BLUE」は、2000年に中国人留学生により創刊されました。その発端は、99年秋、一人の京大留学生劉暁峰の呼びかけて、様々な大学の留学生だちが嵐山に集った朗読会でした。その時、参加者は故周恩来総理の 「雨中嵐山」の詩碑の前で、それぞれ自作の詩を朗読しあいました。
1919年4月に、周恩来の吟詠した 「雨中の嵐山」を紹介します。
雨の中を再び 嵐山を散策
川の両岸には松や桜花もまじえ
見あげると 高き山を見る
水は緑に映え 川の石は人を照らす
雨や霧に溢れているが
一すじの日の光 雲間よりさして
いよいよなまめかし
人の世のもろもろの真理は模糊たるも
模糊たる中に 一すじの光を見るは
いよいよもって なまめかし
この詩句は一同に深い感銘を与えました。後日、この感銘を共有し、"留学"の真の意味を考えた私達は富山の小さな印刷工場の助けにより「藍・BLUE」を創刊し、文学を通して日中の架け橋になろうと努めてきました。この「藍・BLUE」は、日中の間にあり、全てを包容する膨癖たる海洋と悠遠なる天空の色に因み命名されました。私たちの合い言葉は、寛容、歓び、飛翔です。
今まで、私たちは第18号まで出しています。毎回、日本語と中国語、それぞれ約20万字です。「藍・BLUE」の特徴は次の通りです。
1、足で集める文学史料。中国"文革"期に公に発表できなかった文学作品を深く掘り起こし、資料を確認し、オーラルヒストリーとしても記録し、また客観的に分析する。
2、周縁的、低層的、萌芽的、そしてユニークな文学の紹介。一つの時代においては、主流と非主流が併行してあるべきです。
3、台湾文学、台湾原住民文学。香港文学。及び海外華人文学の紹介。中国文学の地図は、中国大陸だけではなく、その地図を広げるべきです。 "
4、日本文学と戦後日本文学思想の紹介。戦後における日本作家の戦争責任をめぐる議論や "文学は究極的に思想的な営み"という思想的資源は、変化の中にある中国文学にとって参考になるかもしれません。
5、在日朝鮮人文学の紹介。これは日本文学の重要な一部分であると思います。
6、韓国におげる中国文学研究の紹介。文学として、方法としての"東アジア"の議論。中国、日本、韓国の知識人の"東アジア精神共同体"についての誌上討論。今、「藍・BLUE」は三国の知識人の共同作業の文芸誌です。
7、最も重要な特徴は「藍・BLUE」は言語の越境から思惟と思想の越境へと発展していることです。日本を発信の場として世界に発信します。
「藍・BLUE」は誌上の作業以外に、次のような活動もしています。2003年3'月に東京北京芸術プロジェクトと協力し、北京で中日両国の詩人が 「越境する言語」のテーマで詩を朗読しあい、また翻訳について討論しました。これは、中国建国後、民間で最初の大規模な声と声のぶつかり合いで、また"投瓶通信 (誰か読んでくれるかもしれないとかすかな期待を込めて文を瓶に入れて海に投ずる)"の実験でもありました。
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