「活動しながらみんなで考える」、文字通りそんな実践に積極白りに参加すべく、モンゴル、香港、台湾などアジア各地を忙しく飛び回り、政策に助言し、後進を指導する。アジア全体を見すえる研究と思考の中で、母国はどう映るのか。
経済の改革解放に合わせた形でかなり進んでいます。丁度日本の,0年代の経済政策と社会福祉政策が今の中国にとても似ていて、日本の70年代の試行錯誤から教訓を得ているところです。特に教訓になったのは 「家族の崩壊」で、日本は60ー70年代の20年間に欧米の福祉国家を追いかけ、知らず知らずのうちに家族の絆が崩壊してしまいました。中国はこのような事態を避けなければならないと考えています。
核家族化は進んでいます。2、3年前、上海でフィールド調査しましたが、核家族化がすごく速いスピードで進行中です。子供たちはどんどん郊外の新興住宅地域に移り、都市中心部の高齢化率が高くなっている。日本の都会と同じです。農村地域もかなり共通していて、過疎化が始まっています。そうした傾向を最小限にしようというのが今の中国の政策です。例えば介護施設をどのように作るか。日本は70年代頃からリゾート地とか高級な老人ホームなど大きい施設を作りました。そうではなくて中核地域に小規模な、あるいは住民たちの手になる施設を作り、運営はスタッフを少なくし専門的な仕事だけを引き受けて、洗濯とか入浴とか散髪とかそういうサービスは家族にやってもらうといったことを考えています。中国の収入のレベルに合わせる意味もありますが、もうひとつの意味は、家族を毎週最低?回必ず施設に足を運ばせ、家族の絆をなんらかの形で留めさせること。さ引こ「今日私は施設に行くから、あなたの親の世話もしてきましょう」というように、家族の絆だけではなく、近所の人や友人との絆も広げながら、地縁・血縁・知縁という三つの 「チエン」の絆が同時につながっていく。アジアの福祉モデルを考えるときにはこうした文化の基盤はとても大事だと思います。
現在日本の大学で教えるのは日本人学生のほかに、韓国、台湾から社会福祉のプロを目指している留学生であり、指導しながら彼らから刺戟も受け、ともに東アジアの理想的な福祉を考えていきたいと語っています。他国の人と文化が流入する必然性を見ようとしない日本社会の閉鎖性をなげきつつも、未来の建設のために沈教授は静かにゆっくりと歩を進めています。
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