5日、米国のトランプ大統領が、通商法301条に基づいて、さらに1000億ドル相当の中国商品に関税を課すべきかを検討するよう通商代表部に指示したという声明を発表しました。
米国の通商代表部は3日に、通商法301条に基づく調査の結果として、関税を課す予定の中国商品のリストを発表しており、これらは総額約500億ドルとなっています。これに対して中国は即座に、米国からの輸入品に対し報復措置として同等の規模や金額、強度の関税を課すと決定しました。このように、両国間の貿易摩擦は急激にエスカレートし、危機的な状態になっています。
しかし面白いことに、5日にトランプ大統領が声明を出した直後に、ホワイトハウスの高官が「トランプ大統領の言う『1000億ドル』は輸入商品の価値の総額であって、関税の総額ではない」と説明しました。米国のライトハイザー通商代表も追加関税について「すぐに実施されるものはない」と個人的な声明を出しています。そしてこの2日間、トランプ体制で新たに経済顧問のトップに就任したラリー・カドロー氏など政府高官が相次いで、貿易戦に対する国内の騒ぎを鎮めるため、中国と合意に達成する可能性があると述べました。こうした点から、トランプ政権の内部でもゆとりがないことが伺えます。
「制裁合戦」はともに傷つくことになります。経済がグローバル化している今日、あらゆる貿易戦は経済学の基本理論に根本的に違反し、国際間で共に求めている貿易の自由化という原則やグローバル経済の基本ルールに違反するということは、周知の事実です。
特に、情報化やインターネット化が急速に進んでいる現在、貿易は基本的に、各国の優位性や生産要素を活かして行われ、発展しています。世界最大の先進国である米国は、かなり前からサービス業が経済の70%以上を占めていますが、一方で中国は工業化が始まって日が浅く、安価な労働力で付加価値の低いものを製造し、それらを輸出することが貿易形態の特徴となっています。一定の時期に貿易のアンバランスが生じるのは、国際的な役割分担の違いや産業構造の違い、そして世界のバリューチェーンにおける位置付け、さらには中米両国の統計方法の違い(米国が発表した対中貿易赤字額は実際より約20%多いとの推計結果もある)などが原因です。
「制裁」は他国の発展戦略を変えることはできません。米国の輸入制限品目を見ると、貿易不均衡の問題よりも、中国が取り組んでいるハイテク産業の成長戦略「メイド・イン・チャイナ2025」へ打撃を加えることが主眼である様子が伺えます。
米国は過去に何度も、通商法301条に基づく制限措置を実施していますが、今日の中国の決意や実力を考えれば、今回の貿易摩擦は米国のこれまでの貿易衝突とは違ったものになります。中国は他国とは違って国土が広く、人口も多く、また輸出主導型の国から内需が経済をけん引するという国になりつつあります。中国の産業のモデルチェンジやレベルアップは、米国との貿易戦争で途切れることはなく、また「メイド・イン・チャイナ2025」が貿易戦争で終結することはありません。逆に、中国政府や国民は外部の圧力を機に、より情勢を見極め、共に対策を考え行動を取って、波風の中で経済をより穏やかに順調に進めていくでしょう。
中国の外交部と商務部は米国の声明に対し、「最後まで付き合う」と表明しています。無理矢理中国を敵に回そうとしても、中国は「関税の暴力」も含めいかなる脅かしも恐れません。(ヒガシ、鵬、森)
筆者:中国国際問題研究院世界経済研究所 姜躍春所長
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