中国最南端の海南島に、ボアオという小さな町があります。面積86平方キロメートル、人口は2.7万人ほどです。この町で2002年から毎年、ボアオアジアフォーラムの年次総会が行われています。フォーラムが開催される時期は、世界の注目がこの町に集まります。
ボアオは海南島の瓊海(けいかい)市に位置します。瓊海市政府の王儀さんは、ボアアジアオフォーラムを第1回目から担当してきました。王儀さんは、初めてボアオに来たときのことを、次のように話しています。
「1985年、船に乗って、初めてボアオに来ました。いろいろなところを見て回るうちに、ここは桃源郷ではないかと思いました。景色が非常に美しいですし、人々もとても素朴で親切です」
この美しい自然環境に、多くの投資家が目をつけました。企業家の蒋暁松さんもそのひとりです。蒋さんはボアオ投資株式会社を立ち上げ、島の開発に着手しました。また、自らの人脈を駆使して、日本・オーストラリア・フィリピンの3ヶ国の政治家をボアオに招き、ボアオアジアフォーラムの開催を約束させたのは有名な話です。今では毎年4月にフォーラムが開かれ、アジア・太平洋各国の首脳が地域問題や世界的な問題について意見を交換しています。ボアオアジアフォーラムの発足について、蒋暁松さんは次のように語りました。
「最初は行きたくてボアオに行ったわけではないのですが、ここの風景にすっかり魅了されてしまったんです。ですから、ここで何かやりたいと思っていたんです。それが最初ですね。ボアオあってのアジアフォーラムだと思います。もちろん、アジアフォーラムが始まったのは、その必要があったからですけどもね」
瓊海市中心部からボアオまでは、車でおよそ30分。道路が敷設され交通が便利になったこともあり、2000年から2008年の間に町の人口は10倍に増えました。人々は農業や漁業を生業にしていましたが、最近では観光業が主力産業になりつつあり、今では人口のおよそ6割が観光業に携わっていると言われています。世界的なホテルチェーンが進出しているほか、地元の農民が経営している民宿も多く、毎年およそ300万人の観光客を受け入れています。ボアオの海辺はいつも人でにぎわっています。また、世界各国の企業や団体が会議の場としてここを利用しており、その数は年間100回を超えています。
ある旅行代理店のガイド・王さんは、毎年4月から始まる観光シーズンには、1ヶ月平均4つの団体ツアーを担当するのだそうです。王さんは、次のように話しました。
「ボアオの魅力は何といっても、美しい自然風景ですね。観光客のみなさんのお目当ても、やはりそれです。ボアオは3つの川が合流する独特の地形を持っています。アジアフォーラムをここで開くのも、その美しい風景が理由のひとつでしょう」
符之福さんは8年前まで魚の養殖業に携わっていました。しかし、ボアオで観光業が盛んになったことから、ボートの貸し出し業に転職し、観光客の島への移動をサポートしています。符さんは、ここ数年観光客がますます増えているのを感じています。
「今、埠頭には50隻ほどのボートが並んでいますが、100人規模を載せられる船を持っているのは私だけですよ。ほかにも60人乗りを2隻、50人乗りを4隻用意しています。それでも多い日は1日20数回、島との間を往復しなければいけないほど忙しいです」
ボアオの人々は、素朴で情熱的です。今年63歳の黄敦吉さんは、20数年間総菜屋を経営してきました。店の看板料理はガチョウの煮込み料理で、地元でとても評判です。観光業の発展に伴い、国内外からの観光客も多く詰掛けるようになり、店はますます繁盛しています。もともと敷地面積が数平方メートルしかなかった小さな店は、今では2階建ての大きなビルに生まれ変わっています。黄敦吉さんの話です。
「おかげさまで、店の料理はお客様からご好評いただいているようです。料理長は高齢のおばあさんですが、彼女の作る地元料理はとても美味しいと思います。ぜひ何度でも足を運んでいただきたいです」
ボアオの呉恩沢町長によりますと、今後もボアオの開発を進め、面積100平方キロメートルにおよぶ特別区域を整備し、美しい自然環境を守っていくとのことです。呉恩沢町長の話です。
「ボアオには観光資源がたくさんあります。都市開発はしないつもりです。静かでロマンチックな町であればと思います。また、住民が暮らしやすく、都市部からやってきた人々も心身ともに癒されるような町を作りたいですね」
ボアオの観光情報です。ボアオは、海南省省都の海口市からは100キロのところにあり、車だと1時間ちょっとで着きます。また、三亜市からは170キロで、車で2時間ほどです。航空便もあります。また、フォーラムが開催されない時は、ボートの貸し出し店や写真屋、土産物屋が午後2時か3時で営業終了となります。オフシーズンの場合は、午前中に観光を済ませておいたほうがよいでしょう。
|