新疆は中国の西北部にあります。シルクロードの故郷で、中国では多くの民族が集まり住むエキゾチックなところです。古くから、ここは、中国と中央アジア、西アジア、ヨーロッパを結ぶ交通の要衝です。

　今年8月28日、メキシコで行われた「第18回国際情報学オリンピック」に、中国は４人の選手を送り、全員それぞれの分野で優勝しました。新疆のウルムチ市第一中学校から参加した高校三年生の王棟さんは、その一人で、中国の西北部でこの競技で初めて優勝した高校生でもあります。優勝した背景には5年間の努力はもちろ　ん、先生と親の支えも秘められています。

　国際情報学オリンピックは、1988年にユネスコ・国連教育科学文化機関が設置したものです。世界各国の20歳以下の中高校生が参加し、パソコン科学分野での重要な競技会です。今回の競技には74カ国からの290人の選手が参加しました。

　さて、王さんは幼いときからパソコンに興味を持ち、中学校に進級してから、国際情報オリンピックのことを知りしました。「これから勉強すると、もっとレベルアップするのではないか」と思い、先生の指導の下で、情報技術の学習を始めました。

　「最初はパソコンに向かうだけの単調な毎日でした。でも、学習が進んでいくうちに、楽しさが分かるようになりました。第一、難問を解けたら、思う存分遊べるからです」と王さんは話しました。

　当時、王さんと一緒に勉強する子供は20人いて、そのうち数人は王さんより能力が上でした。多くの問題については理解できませんが、勉強好きで、頭の回転が速い王さんは、担任の楊慧蓉先生が注目する人となりました。楊先生は、王さんのことについて、「王さんは、頭がよさそうに見えるタイプではありません。でも、彼は特別な素質を持っています。とても粘り強く、負けず嫌いな上、苦労するのを怖がりません。訓練は休みを利用して行っているが、王さんは中学校1年生から高校二年生まで、休んだことがなかったのです」

　ところで、王さんの成長の過程は、順風満帆ではありませんでした。中学校2年生の時、初めて全国青少年情報学オリンピックに参加しました。経験が乏しかったため、高校クラスの2等賞しか取れず、地元新疆の予選を突破することもできなかったのです。中学校3年生の時も、同じことが繰り返され、ショックと受けました。当時の楊先生は、「試験場で王さんの表情は、すでに良くなかったのです。3時間にわたる試験が終わると、涙がぼろぼろとこぼしました。大丈夫よ、まだまだチャンスがあるから、と慰めました。この時、初めて王さんが泣くのを見ました。当時のことは今も忘れられません」と語りました。

　その後の夏休みに、王さんともう一人の生徒が、湖南省に行き、地元の優秀な生徒人と一緒に訓練を受けました。2週間の間に、王さんは全国のトップレベルの選手と討議しあったり、回答を出したり、ゲームもしました。この経験について、王さんは、「湖南省にいた2週間は、ものすごく成長したと思います。帰ってから感じたことは、以前と異なっていました。以前は、問題が配られると、焦ってしまい、よく考えないうちに、答えを書き始めました。でも、今は、問題をよく読んだ後、よく考え、それから答えを書くようになりました。湖南省での経験は自分の考え方を大きく変えました。上達も速かったのです」と、述べました。

　その後、王さんの上達は飛躍的でした。高校1年生の時、第10回全国青少年情報学オリンピックの地区別予選で、王さんは満点に近い成績で新疆の第一位を手にしました。そして、新疆代表チームに抜擢され、その他メンバーと一緒に8ヶ月の合宿訓練を受けました。でも、母親の董新輝さんは、息子の苦労を痛々しく感じました。「息子はこの数年、本当に苦労していました。5年間ほとんど休みませんでした。何をやっても粘り強く最後までやり通す性格ですから、骨身を惜しまずに勉強していました。中学校の時は、放課後も勉強し続け、帰宅は遅かったです。そんな事は止めてもらおうとも思ったことがありました。しかし、息子は粘り強く、あきらめようともしなかったのです。親として応援するしかありませんでした」と、董さんは話しました。

　この結果、王さんは清華大学への推薦入学が決まりましたが、毎日訓練を続けています。その後は、好きなサッカーなどのスポーツを楽しみます。時間割を合理的に作って、効果をより高める学習をすることができると、語りました。