新疆の美しい景色、色濃く残した民族風情、そして、豊かな文化芸術資源は人々を魅了し、多くの映画のロケグループを引き付けています。この東西の文化が融合する土地で、地元の民族文化をテーマに、少数民族の生活ぶりを映画にする新疆出身の監督がいます。その監督が今日の番組の主人公、新疆天山映画製作所のセルザティ監督です。

　今年5月、新疆で製作する映画『トルファン情歌（トルファン・ラブソング）』は、国家ラジオ映画テレビ総局が、フランスのカンヌ映画祭に出品する三本の中国映画の一つです。この映画は新疆トルファンに住む、ウイグル族村長の三人の子供のラブストーリーを映画にしたものです。映画は中国全土で知られる数曲の新疆の歌をバックミュージックにした民族情緒豊かな作品です。これは新疆の映画が初めて海外で上演されるものです。その監督はセルザティさんです。

　セルザティさんは1963年にウルムチに生まれ、5歳の時にお母さんに連れられて映画を見たことがきっかけで、映画と絵画に夢中になりました。結局、北京映画学院の美術学部に進み、1983年先輩の張芸謀（チャン・イーモ）や陳凱歌（チン・カイカ）が監督した映画『一人と八人』、『黄土地』を見たセルザティさんは、新疆地元で映画撮影をしようと考えました。

　大学卒業後、セルザティさんは新疆の天山映画製作所の美術デザイナーになりました。セルザティさんはその頃のことについて、「大学で学んだ理論と実践は差があったので、初めからやらなくてはならない。新疆に戻ってから、僕は天山映画製作所で美術デザイナー助手を二年間やった。1987年、『マイマイティ外伝』を撮影する時、師匠が病気になって、ロケ地の下見を僕にさせた。後で分かったが、それは師匠がけびょう仮病を使って、独立させようとしたのだ。この映画で、僕は中国国内の映画賞、金鶏賞をもらった。」と述べました。

　90年代初期、海外の映画が大量に中国に輸入されたのをきっかけに、新疆の映画は低迷期に入りました。以前、天山映画製作所は毎年五、六本の映画を制作していましたが、一本か二本になりました。映画製作所の一部の人は、その寂しさに耐えられなくなって、他の業界に身を投じました。このような状況の下で、セルザティさんは、地元に根を下ろすことこそ新疆映画を救う道だと思い、プライベートの時間を利用して、新疆風情が溢れるコマーシャルの撮影に専念したのです。

　「コマーシャルを撮ったのは、監督の目でカメラを回すためだ。僕が撮ったコマーシャルは芸術的なものが多く、三、四十秒、二つか三つのシーンで物語性のあるコマーシャルだった。」とセルザティは言っています。

　セルザティさんが製作したコマーシャルは、新疆の特色があり、何回も国家級の賞を授賞しました。新疆の企業だけではなく、他の企業、海外の企業からの発注もありました。これについて、天山映画製作所の張毅剛所長は次のように述べました。

　「セルザティさんが製作した新疆『伊犁特』という酒のコマーシャルのアイディアは新疆のテレビコマーシャルの新しい形を作り、その後、セルザティさんが作った多くのコマーシャルは新疆の男性、馬、広大な景色が欠かせないものだ。コマーシャルのポジショニングと製作もいい」。

　コマーシャルの撮影を重ねた結果、セルザティさんの監督としての基礎を築き上げたのです。セルザティさんはこれまでの新疆の映画にはストリーが欠け、新疆以外の観客の心を感動させることができないことが気になっていた。だからこれまでの新疆映画と違う地元の映画を製作しようと思っている。そんな時、天山映画製作所の張所長は『トルファン情歌』の脚本を持って、セルザティさんが待ち焦がれていたチャンスを与えたのです。

　去年8月、トルファンの気温は45度以上ありました。夜明けのトルファンの村の景気を撮影するために、セルザティさんのロケチームは、夜中から日の出まで待っていました。さらに、昼に、高温の中で撮影を続けました。

　映画を上映する前の試写会で、多くのウイグル族の観客はセルザティさんの手を握って、「よく新疆を理解してくれて、ありがとう」と言いました。セルザティさんの心の中で、音楽と愛の物語で感情を表すものは、中華民族の共通したもので、それも世界的に共通したものだと考えています。