(3)人民元の切り上げは中国の国益を守るため
記者:人民元の国際市場での切り上げと国内の貨幣価値の下落について、どうお考えですか?
余所長:それは、インフレと元の切り上げの関係に対する誤解です。当面のインフレは人民元の切り上げによるものではなく、経済の過熱および外部の価格変動によるものです。人民元の切り上げは石油や大豆、鉄鉱石など重要な輸入商品の価格を下げました。これによりインフレが抑制されたは疑いもない事実です。 当初、人民元を切り上げた目的は中国経済の構造を変えることにありました。すなわち、インフレを抑制することではなく、中国経済の外部への依存度を弱め、非貿易部門の成長を早めることを目指したのです。そのため、人民元切り上げという方針は経済の周期的な変動によって変わるべきではありません。また、それはアメリカの圧力に屈服する必要もなく、中国自身の利益を守るためのものなのです。 低い為替レートで輸出を維持することは、中国の利益を犠牲にすると同時に、外国、特にアメリカを補助することなります。10年前にわれわれが外貨準備高を増えすぎることによる危害を十分認識していないと言ったら、まだ許すことができるでしょう。しかし、今になっても、貿易黒字の高度成長を維持し、外資を誘致するために、国民の待遇よりはるかによい優遇政策を継続していくのはもう容認できないのです。 中国の外貨準備高はすでに1兆8000億ドルに達しています。ここ数年は、さらに年間4000億ドルのスピードで増え続けています。外国の報道によると、中国の外貨準備高のうちの70%は米ドルで、そのうちの大部分がアメリカの国債だということです。 中国はアメリカにとって最大の債権者であるので、アメリカの金融危機の被害者になる可能性は非常に高いと思います。今も、われわれはドル安や米国のインフレ率の上昇、それに一部の債権が返済できなくなっていることによって損失を蒙っています。今後、危機の悪化につれて、その損失はますます大きくなっていく恐れがあります。 1兆8000億ドルの外貨準備高を備蓄した中国は今、アメリカのサブプライムローンの「損失分担者」になりました。しかし、残念なことに、一部の官僚や経済学者がこのことをまだ認識していません。彼らは輸出戦略や巨大な貿易黒字の維持を希望しています。輸出部門にとって、貿易黒字は利潤と就業の安定を意味しているからです。ところが、全国にとっては、貿易黒字はむしろ損失につながっているのです。 中国は貿易黒字を直接投資やほかの通貨資産に変えなければ、アメリカのサブプライムローンの被害者になるに違いありません。今は経済成長の方式を転換しなければならないのです。すなわち、戦略を調整して、内需を経済成長の原動力にすべきだと思います。
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