金融危機は中国にとって、リスクなのか、チャンスなのか。また、今年、珠江デルタや長江デルタで製造業工場が相次いで倒産したことは、産業構造を変えるよいきっかけになるのか、それとも政府の保護が期待されるべきなのか。中国国内では、意見が分かれています。
国際ビジネスコンサルタントで、コラムニストの呉向宏さんは、ブログで「『メイド・イン・チャイナ』の強みを守ろう」と題したコメントを発表しました。その主な内容は以下の通りです。
「『メイド・イン・チャイナ』の強みを守ろう」(11月4日)
世界金融危機の影響が次第に現れるにつれ、国内製造業も大きな圧力に直面しています。最悪の状態はまだ訪れていませんが、来年はさらに厳しい一年になるでしょう。一部の専門家は、中国の製造業は元から高度な技術を必要とせず、低付加価値で、さらには環境を汚染しかねないものであるため、持続的な発展には向かないと考えています。彼らによれば、中国の製造業は「レベルアップ」や「転換」などを通じて「ブランド」「開発」「サービス」の確立という方向に転じる以外、生き残る道はありません。
私の見解では、中国が金融危機を機に製造業を放棄するとしたら、それはこの30年の経済政策で犯した最大の過ちとなるでしょう。
金融危機とは関係なく、中国の製造業全体が大規模な転換やレベルアップを実現するには、一定の客観的な条件を必要とします。
実は、中国は80年代初頭に第1回目の産業レベルアップを経験しています。すなわち「メイド・イン・チャイナ」の飛躍です。70年代以降、先進国の労働環境基準が高まり、国内ではローエンドである製造業の生存条件が悪化していきました。それと同時に、自由貿易の考えが流行し、1984年のウルグアイ・ラウンドからは、グローバルな自由貿易を検討するようになりました。また、80年代のウォール街では「金融イノベーション」が形成されつつあり、国際金融システムは大いに活性化されました。「先進国の製造業が自ら生き延びる道を模索したこと」「世界の自由貿易化」「国際金融資本の推進」、この3つが中国の優位性を浮き立たせることになり、中国はわずか20年で世界でもっとも重要な製造大国になりえたわけです。
現時点では、中国の製造業の転換を支えることのできる国際的な産業構造の転換や調整はまだ観測されていません。目下の金融危機は、こうした大型の構造転換の可能性をさらに低下させてしまいました。
中長期的に見て、私は「メイド・イン・チャイナ」は必ずしも転換やレベルアップが必要だとは思いません。人間が生きていく上では衣食住が欠かせませんし、いろいろな物質的ニーズがあります。したがって製造業は「斜陽産業」にはならないでしょう。「製造業」は決して「ローエンド」「低利潤」の代名詞ではありません。60、70年代の日本の産業構造は、相当部分が加工製造業でした。日本各地に点在する中小企業ないし家庭単位の工場は、特定の領域で世界最先端の製品を製造していました。こうした工場が、大きな製造産業チェーンとなって、自動車産業や半導体産業などの発展を支えたわけです。いまの中国の加工製造業は、当時の日本に似るところがあります。いくつかの小さな工場は、特定の細分化された市場ですでに世界レベルに達しています。
私にしてみれば、正しいスローガンは「産業転換」や「産業レベルアップ」ではなく、「産業拡張」です。つまり、製造業の優位性を捨ててまでして「ブランド」「開発」「サービス」を追及するのではなく、製造業のコア・コンピタンスを増強することを目標に、産業体系を作り上げるのです。金融サービスや研究開発サービス、ブランドサービスなどは、産業を支えてくれるでしょう。それをほかの産業へ次々と広めていけばよいと思います。(編集:王小燕、翻訳:黄恂恂、チェック:末永)
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