余永定所長は以前、中国中央銀行・通貨政策委員会の委員を務めました。中国のマクロ経済の動向について、余永定所長は以下のように述べています。隔週誌『南風窓』が伝えました。
(1)経済環境は良好
記者:いまの中国のマクロ経済はどんなことが問題となってますか?中国経済の今後はどのように発展するのですか?
余所長:まず、中国の現在のマクロ経済情勢は全体的に良好だということを強調させてください。盲目的に楽観視する態度は間違っていますが、情勢を過度に厳しく見ることも誤りです。 2007年7月から、中国のインフレーションが深刻化しています。インフレの根本的な原因は、経済の過熱です。インフレを抑制するには、緊縮的通貨政策を実施しなければなりません。経済成長のペースダウンはこの政策の必然的な結果です。そして、マクロ調整は中国の経済構造の改善を促しています。超過気味だった輸出は縮小しつつありますが、それと同時に輸出製品の単価は明らかに上がっています。これらは望ましい現象です。中国の投資のスピードは減速して、特に不動産投資のペースが鈍化してきました。これらの変化は、経済成長のペースダウンにつながっています。これは、私たちが望んでいる結果でもあります。 2003年以来、5年も続いた高度成長と低いインフレ率を経て、中国の経済は今、ある問題にさしかかっています。この5年間の低いインフレ率と高度成長に対して、現在、インフレ率が上昇し、経済成長が減速している上、将来の経済に対する予測が難しい状態になっているのです。 現在の情勢は、異なる3つの角度から捕らえることができます。まず、成長と後退は経済成長の中で周期的に起こります。1990年代以降、私たちは大きく分けて2つの周期を経験しました。次に、2007年8月から米国金融危機の悪化の影響を受け、中国経済、特に輸出部門がダメージを受けました。第三に、経済成長のペースダウンは中国がこの何年間かにわたって行った緊縮的マクロ政策の結果です。構造調整、インフレとバブルの抑制のための緊縮的政策は正しいものでした。経済成長のペースダウンはその代価として支払われなければなりません。中国は良好な財政状況にあります。巨額の外貨準備高を保有しており、経済が著しく後退した場合に、それをコントロールする力があります。実は、純輸出額と不動産投資成長がペースダウンすると同時に、国民の消費はプラス傾向にあります。特に農村の景気が良好で、就業率が史上最高となりました。東南部の沿海地域で経済成長のペースダウンと同時に、中部と東北部の伝統的な工業基地は成長が進んでいます。また、一部の加工貿易産業が不景気になっているものの、多くの企業は産業のレベルアップで成果を収めています。言いかえれば、マクロ経済が短期間内に悪化しても、中国の経済構造は改善しつつあります。 全体的に言って、中国の今の経済状況は良好です。これは中国政府がアジア金融危機以降、マクロ調整を成功させた結果です。中国はインフレを抑制し、経済の軟着陸を実現できると信じています。中国は緊縮的通貨政策と人民元の為替レートを切り上げる方針を継続して、さらに財政政策の運用を前向きに検討することで構造調整の痛みを和らげるべきだと思います。
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