(2)緩やかに人民元を切り上げると同時に資本管理を改善
記者:当面また今後一定期間、為替レートはどのように変えていけばよいのでしょうか。
余所長:当面はやはりインフレ抑制政策を主要な政策目標とすべきです。経済成長率を9%前後に保てれば、過度に心配する必要はありません。 為替政策は2003年以来、マクロ調整の重要な地位を占めており、今度のインフレの通貨供給源、それにその発展方向は次のいくつかの段階に分けられると思います。 第1は、資金導入優遇政策と輸出主導政策が経常収支と資本収支の黒字をもたらしたことです。時間が経過するとともに、二つの黒字は構造的なものとなり、中国経済の外需への依存度は日に日に高まっています。 第2は、外需依存度が過度に高まったため、人民元の切り上げを望まなくなったことです。二つの黒字の下で、為替レートの安定を保つためには、中央銀行は大規模な市場介入を行わざるを得ません。ドルを買って人民元を売るということです。 第3は、中央銀行の介入が外貨準備とマネタリー・ベースの大量増加をもたらしたことです。広い意味での通貨の増加ペースはずっとGDP成長率を上回っています。こうした状況がインフレをもたらしたのです。 第4は、持続的な、巨額の二つの黒字は、人民元の切り上げ期待に必ずつながるということです。こうした期待はさらに貿易黒字と外国による直接投資以外の資金流入の原因となることで、人民元への切り上げ圧力や中央銀行のヘッジの負担がもたらしたのです。過流動性がさらに増えることになります。 第5は、人民元レートを完全フロート制に移行させることが、二つの黒字と人民元切り上げ期待の原因である過流動性の問題を解決する最も簡単な方法です。しかし、人民元の価値は長年にわたって低めに評価されてきたため、完全フロート制に移行した場合、人民元は大幅に上昇する可能性があります。輸出への深刻なダメージを懸念するため、中国は徐々に切り上げる道を選んだのです。 第6は、人民元が徐々に上昇していく過程で、米ドルとの間の利ざやが逆転することでホットマネーが流入することです。中国の資本管理はまだ多くの面で完全ではなく、一定の期間は、投機資金の流入を有効に防ぐことができません。人民元の緩やかな切り上げに加えて資本管理の多くの問題点が、現在の過流動性をもたらした主因だと言えるでしょう。 総じて言えば、通貨政策で打つ手がないことが、マクロ経済の管理を一層難しくしているのです。「頭隠して尻隠さず」がこの数年のマクロ経済政策の特徴だと言えます。
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