アフガニスタンに駐留する米軍はこのところ、数回にわたってパキスタンとの国境を越え、テロの根拠地と見られる北西部の部落を攻撃し、多くの死者が出ています。パキスタン国内で米軍の一方的な軍事行動を批判する声が上がる中、11日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、ブッシュ大統領が7月、米軍特殊部隊にパキスタン領内で同政府の許可を得ずに地上作戦を行うことを秘密裏に許可していたとの情報をスクープしました。この報道で、パキスタン国内ではアメリカが主権を侵害したとして強く抗議する声が上がっています。

　パキスタンのメディアによりますと、ニューヨークタイムズのほかにも、アメリカの数人の高官もブッシュ大統領が秘密裏に許可を出していたことを認めています。また、数日前に米軍が行った軍事行動もこの情報を更に裏付けることになりました。3日、米軍が主導するアフガン駐留特殊部隊は武装ヘリコプターでパキスタンに侵入、部族地域南ワジリスタンにある村を攻撃し、約15人を殺害しました。アメリカがテロとの戦いを始めて以来、パキスタン領内で地上での軍事行動に出たのはこれが初めてです。

　米軍は以前から越境攻撃を行っていましたが、主に空爆で、しかもこれほど頻繁ではありませんでした。パキスタン新政権が発足してわずか数カ月間に、米軍は20回以上も越境攻撃を行っており、さらに地上部隊の越境作戦にも踏み込んだことで、市民に数多くの死傷者が出ました。

　アメリカの高官は、パキスタン政府に通知せずに軍事行動に出る戦略に変えた理由について、パキスタンの情報機関がテロリストに情報を漏らす疑いがあり、パキスタンと情報を共有した場合、軍事行動の効果に影響を及ぼすからだと説明しています。また、パキスタン北西部の部族地域は国際テロ組織アルカイダやアフガンの旧支配勢力タリバンが潜んでいる場所で、ますます多くのテロリストがここから越境し、アフガン駐留部隊にテロ攻撃していると話しています。このことから、アメリカが反テロの盟友であるパキスタンに対して、信頼を失い不満を強めていることが伺われます。

　最近の米軍による頻繁な攻撃に対して、パキスタン政府と軍は数回にわたり強く抗議しており、その強硬姿勢もかつてないほどです。12日、米軍は北西部の北ワジリスタンを無人飛行機で空爆し、14人が死亡、12人が負傷しました。これについて、パキスタン政府と軍幹部は様々な場で、強く非難しました。ギラニ首相は「パキスタンだけが自国の領土でテロリストを攻撃する権利を持ち、しかも国境付近で有効な反テロ行動に出る力を有している」と語り、米軍が情報を提供しないことを非難しました。ムクタール国防相は「パキスタンはいかなる犠牲を惜しむことなく国境の安全を守る。外部勢力が主権を侵害することを許さない」と強調しました。市民も米軍がパキスタンの主権を踏みにじり、大勢の人を死傷させた一方的な軍事行為に強い不満を示すなど、反米感情が高まっています。

　アメリカが単独でパキスタン領内での軍事行動を続行すれば、パキスタンとアメリカのテロとの戦いでの同盟関係に影響が出てくるでしょう。また、国家主権とアメリカとの関係でどちらを重く見るか、新政権とザルダリ大統領は大きな難題に直面することになります。　（翻訳：李軼豪）