パキスタンで、与党第2党のムスリム連盟・シャリフ派が25日、連立政権から離脱すると発表しました。これで、ムスリム連盟と人民党からなる連立政権は崩壊することになります。パキスタン情勢はより複雑化しています。
25日行われた記者会見で、ムスリム連盟の代表・シャリフ氏は、約束をきちんと守らなかったと、人民党を非難しました。これについてシャリフ氏は、「両党の合意に基づいて、ムシャラフ前大統領が辞任すれば、去年の緊急状態で解任された60人近くの裁判官の職務が、すぐに回復されるべきだった。しかし、今になってもこの問題は解決されていない。人民党が約束を破ったことで、ムスリム連盟は止むを得ず連立政権から離脱し、反政府派になる」と強調しました。
ムスリム連盟と人民党の分裂を招いたのは、第一に、両党の権力闘争によるものです。今年2月に行われた国民議会選挙で、人民党とムスリム連盟はそれぞれ第1党と第2党になり、連立政権を組みました。しかし、大臣ポストの配分、解任された裁判官の復職問題などで食い違いが生まれました。5月13日、ムスリム連盟の9人の閣僚は、人民党が約束を果たさず、去年11月に解任された裁判官の職務を回復しなかったことを理由に、ギラ二首相に辞表を出しました。この辞任騒ぎがまだ収まらないうちに、ムスリム連盟が連立政権から離脱すると脅かしたことがあります。
これについて地元メディアは、「ムスリム連盟と人民党による連立政権が成立した後、ムスリム連盟は九つの閣僚を獲得したものの、首相やその他の重要な閣僚は人民党が握っている。このような権力配分に対して、ムスリム連盟は不満に思っている。ムシャラフ前大統領が18日に退陣に追い込まれた後、ムスリム連盟は大統領の座を手にすることで、両党の権力のバランスを図ろうとしている」とみています。
しかし、人民党はムシャラフ前大統領の辞任後、23日、党の共同総裁、ザルダリ氏を大統領の候補に決めしました。連立政権内のもう一つの政党、民族人民党は即時に支持を表明しました。これで、ムスリム連盟が大統領を目指す夢は破れました。
こういったあたらな情勢を前に、ムスリム連盟は党の最大の利益を確保するため、人民党に二つの要求を出しました。一つは、議会解散を含めた大統領の権力を弱めるため、憲法を修正すること。もう一つは、25日までに、解任された最高裁の元長官のチョードリー氏を含めた数10人の裁判官を復職させることです。これに対して、人民党はまだ回答を出していませんが、ザルダリ氏を大統領候補にした際、「これら裁判官の復職の件については、具体的なスケジュールは出せないが、復職は保証する」と表明しました。
これについて、「裁判官らの復職の問題で、人民党のザルダリ総裁は表では同意を表明したものの、即時に実行しようとしない。その主な理由は、ザルダリ氏は、去年11月に行われた最高裁判所の人事異動で、直接の受益者である。それは、ムシャラフ前大統領が任命した最高裁判所の長官が、ザルダリ氏の学歴問題を解決した上で、汚職の告発を免れることができた。もし、最高裁の元長官チョードリー氏が復職すれば、ザルダリ氏の政治的合法性が問われる恐れがある」との見方が出ています。(朱丹陽)
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