日本の福田首相は25日から27日にかけて、ロシアを公式訪問しました。福田首相の今回のロシア訪問は、去年9月の首相就任以来、初めてです。モスクワで、福田首相はプーチン大統領、メドベージェフ次期大統領とそれぞれ会談し、平和条約に関する対話を継続し、資源開発や貿易協力を強化することで一致しました。しかし懸案の北方領土問題では進展がなく、対話継続を確認しただけで終わりました。
ここ数年、日露関係は、いわゆる「政治は冷たく、経済は熱い」状態です。両国間の貿易はますます盛んとなり、去年の貿易額は210億ドルに達しています。しかし、北方領土問題を巡っての政治関係は改善されず、東アジアの海上における紛争も、度々起きている現状です。
日本は、北方4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するという立場を主張し続けてきました。プーチン大統領在任の7年間、日本の歴任首相はこの問題の解決に取り組んできましたが、一向に進展を見せないどころか、後戻りさえありました。そんな中で、福田政権に変わってから、柔軟かつ実務的な外交政策により、周辺国との緊迫した関係がある程度、緩和されたといえるでしょう。ロシアの政権交代を控えての今回の訪問は、ロシアとの信頼関係を築き、今後の両国関係に積極的な姿勢を示すのが主な目的のようです。
ロシアを出発する前、福田首相は両国関係を「高い次元」に引き上げるため、領土問題と平和条約の締結についてしっかり協議する、との発言をしましたが、ここからも北方領土問題の解決に対する福田政権の決意が伺えます。しかし、訪問では、北方領土問題に詳細に触れられず、具体的な進展はありませんでした。
一方、今回の訪問では、両国間経済貿易協力について、突っ込んだ意見交換がされました。ロシア大統領の広報担当によると、両首脳は、「石油天然ガス、運輸、原子力エネルギー分野で協力を強めることで一致し、ロシアはシベリアと極東地域の開発で日本の協力を歓迎する」との意向を明らかにしたということです。また、先日のロシアメディアの報道によれば、日本はこれらの地域での投資に大変関心を示しているということです。
このほかに、気候変動も今回の訪問のもう一つの重要議題でした。メドベージェフ次期大統領との会談で、福田首相は生態環境保護などについてロシアと協力したい意思を明らかにしたほか、今年7月に北海道で開催される主要国首脳会議で、これについて重点的に話し合うと語りました。
福田首相の今回のロシア訪問における最大の成果は、両国関係に良好な雰囲気をもたらし、貿易協力に関する協力強化が促されたことにあるといえるでしょう。また、福田首相は、プーチン大統領の在任中にロシアを訪問するという約束を果たしたばかりでなく、メドベージェフ次期大統領との会談も実現したことを通じて、今年、日本で開催される主要国首脳会議に向けて積極的な準備ができたことになります。しかし、長年の懸案だった領土問題で実質的な進展がなかったことから、今後の両国関係は必ずしもスムーズに行くとは考えられないというのも現実だと思われます。
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