パキスタンのムシャラフ大統領は、29日、文民大統領として2期目の就任宣誓を行った後、今月3日に発令した非常事態宣言と暫定憲法令を12月16日に解除すると発表しました。
29日午前、前日に陸軍参謀長を退任したムシャラフ氏は、2期目の大統領に就任しました。任期は5年となります。ムシャラフ大統領は、宣誓式で、「これは、完全な民主国家へ移行するパキスタンの里程標となる」とした上で、「パキスタンは、今後、さらに大きく変わるだろう」と述べました。
この日の夜、ムシャラフ大統領は、国民に向けたテレビ演説を行い、「パキスタンが直面しているテロの脅威は、国の経済発展に深刻な影響を与えた。また、一部のメディアが煽動しているため、やむを得ず、非常事態宣言を行ったものだ。このやり方は、司法機関によって、認められている」とした上で、「12月16日に、非常事態宣 言を解除し、憲法を回復させる」と述べました。ムシャラフ大統領は、さらに、来年1月8日の議会選挙を予定通りに行い、すべての政党がこれに参加するよう呼びかけました。
ムシャラフ氏がパキスタン大統領に再任したことについて、国際社会は歓迎の意を表しました。中国の胡錦涛国家主席は、29日、ムシャラフ大統領に祝電を送り、パキスタン大統領の再任を祝いました。ムシャラフ大統領は、就任式典に出席したパキスタン駐在の羅照輝中国大使と会談し、「中国との友好は、パキスタンの外交戦略の基礎であり、パキスタン与野党の共通認識でもある」とした上で、「新しい任期内で、パキスタンは、引き続き両国関係を大切にし、各分野での協力を推進していきたい」と述べました。
関係者は、「ムシャラフ大統領が就任宣誓後すぐ非常事態宣言を解除する具体的な日付を明らかにしたことには、様々な理由がある。国の民主化問題や安全情勢を考慮した他、国内外からの政治的圧力もかなり大きかったからだ」と分析しています。非常事態が宣言された当初、イギリスは、パキスタンに対して、イギリスと旧植民地などでつくる英連邦への加盟資格を停止しました。また、アメリカなど西側諸国もまた、パキスタンへの援助を考え直していくとの意向を示しました。
さらに、パキスタン国内からも大きな反対の声が上がりました。シャリフ元首相が率いる「全党民主化運動」は、「非常事態宣言を解除しなければ、来年1月の選挙をボイコットする」との姿勢を示しました。また、主要野党・人民党のブット代表は、「ボイコットする可能性がある」と述べました。
ムシャラフ大統領が非常事態宣言を解除する具体的な日付を明らかにしたことにより、国際社会からの圧力は弱まり、来年の選挙への抵抗も弱まっていくものと見られています。
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