パキスタン陸軍参謀長官でもあるムシャラフ大統領は3日、全土に非常事態を宣言すると同時に、臨時憲法を発令しました。

　パキスタンの国営テレビによりますと、ムシャラフ大統領は当日、アジス首相やパキスタンの四つの州の政府高官、軍の指導者などと会議を開き、会議が終わった後、この決定を行いました。ムシャラフ大統領は当日夜、テレビ演説をし、この中で「非常事態の宣言は国家利益を保護し、過激派の攻撃による治安悪化に対応するための措置である」とした上で、「パキスタンは転換点に直面し、テロ自爆事件がカラチ、ラワルピンジ、サルゴダなどで続いている。この重要な歴史的な時期に、国のために、望まないが、せざるを得ない決断を下した」と述べました。

　パキスタン国営通信によりますと、臨時憲法に基づき、1973年の憲法が停止されることになる一方、参議院と国民議会、パンジャブ州、スィンド州、バローチスターン州の州議会は正常に運営され、首相と各州長の職務も保留されるということです。関係筋によりますと、ムシャラフ大統領は非常事態宣言をした後、パキスタン最高裁判所長官と数人の裁判官が解任されました。今、パキスタンの各民間テレビ放送が閉鎖され、首都・イスラマバードの道路で数多くの警察が車を検問しています。

　関係者によりますと、ムシャラフ大統領の決定はパキスタンの複雑な政治情勢と密接な関係があります。数日前、パキスタンの重要な軍事拠点・ラワルピンジと最大の空軍基地・サルゴダでパキスタン軍隊を対象とする襲撃事件が発生し、数十人の死傷者が出ました。また、西北地域で起きた治安部隊と武装勢力の衝突事件も多くの死傷者をもたらしました。特に、10月18日、ブット元首相を対象とする自爆テロ事件で139人が死亡し、500人あまりが負傷しました。

　また、ムシャラフ大統領は10月6日の大統領選挙で圧倒的な勝利を収めましたが、最高裁は陸軍参謀長を兼任するムシャラフ氏の立候補資格について審理中で、その大統領の地位がまだ認められていません。以上の理由によって、パキスタンの情勢はますます複雑になっています。